近森基「KAGE」

HAPPENINGText: Atsuko Kobayashi

オーストリア・リンツで9月に行なわれたデジタルとアートの祭典「アルス・エレクトロニカ ’97」。日本からのアーティスト参加も年を重ねる毎に増え、今年は岩井俊雄&坂本龍一、センソリウム、ダムタイプなどが参加。岩井俊雄&坂本龍一、センソリウムはいずれも金賞を獲得した。その中で、リンツに単身乗り込んだ筑波大学院生、近森基の「KAGE」という作品は賞こそはとらなかったけれども、会場での好評を博して展覧会終了後も常設展示場に半年間展示される事に、また世界各国で紹介されていく事となった。

タッチセンサーのついた赤、青、黄色、緑、オレンジの5色の三角錐が並び、人が触ると人体内の微弱な電気に反応して、一個一個のオブジェに仕組まれた花や魚、飛行機などの“影”の映像が飛びだしてくる。様々なアクションを起こす映像の“影”と、触っている自分自身の実際の“影”とが映しだされ、ゆらゆらと動く不思議な“影”の世界に引込まれていく。

『影っていうのは、例えば幽霊には影がないとか、影が薄いとか、ある意味存在の証みたいなもの。触って遊んでいるうちに、自分の存在について考えてくれたらいいな、という想いで作りました。アルス・エレクトロニカでは沢山の人が見にきてくれて、触って遊んでいってくれました。特に子供と老人に人気があって。』(近森氏談)

アナログ(人体)とデジタル、エンタテイメント性とアート性が見事に融合した作品だといえる。
半年間リンツに展示された後の来年3月からは、バルセロナで行なわれるデジタルアートの祭典「ソナー」、スイスのテクノイベント「VIPER」、ドイツ・ハノーヴァーでの「ユニヴァース 2000」、などヨーロッパ各地を巡回、展示されていく予定。日本で展示されるのは来年9月〜10月頃行なわれる東京・恵比寿の東京都写真美術館の企画展になる予定だ。

Text: Atsuko Kobayashi

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