モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン
HAPPENINGText: Alma Reyes
ルネ・ラリック《香水瓶「ジュ・ルヴィアン」》(ウォルト社)1929年12月2日原型制作、ポーラ美術館/マルク・ラリック《香水瓶「ジュ・ルヴィアン」》(ウォルト社)1952年以降、ポーラ美術館
1925年に開催されたパリ現代産業装飾芸術国際博覧会(通称アール・デコ博)で、工業生産品と調和する幾何学的な「アール・デコ」様式の流行が絶頂を迎えた。ガラス工芸作家で宝石商であったルネ・ラリックは、自動車を飾るカーマスコットや、幾何学的な建築空間に合わせた室内装飾、香水瓶など数々のデザインを手掛け、アール・デコ博の目玉のひとつであった。ラリックのガラス製の香水瓶《ジュ・ルヴィアン》(1929年)は直線的な高層ビルの形を模しており、工業製品の美を称揚し、未来を感じさせるイメージを作り出した。
A.M.カッサンドル《ポスター「ノルマンディー号」》1935年、京都工芸繊維大学美術工芸資料館[AN.4739]© www.cassandre.fr APPROVAL by the ESTATE OF A.M.CASSANDRE / JASPAR 2023 B0685
ウクライナ系フランス人のポスター・アーティストで画家のアドルフ・ジャン=マリー・ムーロンは、A.M.カッサンドルとして知られ、広告ポスターの世界で高く評価されていた。ポスター《ノルマンディー号》(1935年)は彼の代表作で、当時世界最大の豪華客船だったノルマンディー号を描いている。カッサンドルはそれを単純化した造形と大胆なグラデーションを用い、シンメトリーで大胆に表現した。
ジャン・ドロワ《ポスター「PARIS-1924 第8回パリ・オリンピック大会」》1924年以降、京都工芸繊維大学美術工芸資料館
他に注目すべきポスター・デザインは、ロベール・ボンフィスの《PARIS-1925 アール・デコ博》(1925年)と、ジャン・ドロワの《PARIS-1924 第8回パリ・オリンピック大会》(1924年以降)などがある。ボンフィスのポスターは、ガゼルとニンフをモチーフにグラフィカルに視覚化。ドロワの作品は、フランスの三色旗の前に誇らしげに立つ男性選手たちを描いており、下部には忠誠と勝利の象徴として紋章と重なったヤシの葉が描かれている。
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