島津冬樹

PEOPLEText: Wakana Kawahito

2009年より世界中で路上や店先で放置されている段ボールから、財布を作るブランド「カルトン」をスタートした島津冬樹は、今の時代を象徴するアーティストだ。使用済みダンボールという不要物に新しい価値をつけていく。そんなパラダイムシフトによりゴミがゴミでは無くなる瞬間の目撃者になる時、私たちは興奮する。

島津は、アメリカや中国で講演会やワークショップを行ったり、日本ではノースフェイスや無印良品、レクサスなどのブランドとコラボレーションを行ったりとその活動の幅を広げている。12月にはドキュメンタリー映画の公開も控えている氏に、ダンボールに対する愛と活動について語ってもらった。


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他にもパッケージのものは沢山ありますが、なぜダンボールだったのですか? ダンボールではないといけないという理由は?

まだ美大生だった2009年に初めてダンボール財布を作ったのですが、そのきっかけは財布を買うお金がなかったからです。それで必要に迫られて、どうしようかなと考えていたら家にたまたまダンボールがあったので、それで財布を作る事を思いつきました。なので、最初はダンボールでなくてはいけないというわけではなかったのです。けれども、ダンボール財布の制作過程でダンボールを拾っていくと、ダンボールには色々な物語があることに気がついて、徐々にその魅力にハマっていた感じですね。財布制作の物理的な面においても、ダンボールはある程度丈夫なので、他のパッケージのものに比べて素材として優れています。


Carton Wallet, Model 2019 © Carton

なぜ財布だったのですか? 他のものは試しましたか?

日常的に身に付けるものが良かったので財布を選んだのですが、それ以外にもバックや帽子も試作しました。帽子は身に付けるものとしてのデザインに納得がいかなかったのでやめました。バックは防水性という意味でまだ基準に達するものができていないです。逆に財布は、完全に水に浸かってしまうのは良くないのですが、手洗いして乾かして使うこともできます。


4 Years Later, Model 2009 © Carton

意外と耐久性が良いんですね。

そうなんです。手入れすれば長持ちする事も発見でした。最初作った時は1ヶ月ぐらいしか保たないものかなと想像していたのですが、少なくとも2年ぐらいは保ちますね。これまで買ってくださった人の中には7年以上も使ってくれている方もいて、その記録は今も更新中です。また、壊れたり古くなった部分だけを変えたりして、修理する事もできます。そうすればかなり長く使えます。

そう考えると、革の財布と同じぐらい保つ可能性がありますね。

まさにその通りです。これは想定外の発見で、驚きでした。

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