ブランクーシ 本質を象る

HAPPENINGText: Alma Reyes

ブランクーシの彫刻には、女性が主題として広く登場する。磨き上げられたブロンズ製の《王妃 X》(1915–16年;2016年鋳造)の胸像はあたかも男根の形のように彫られている。


コンスタンティン・ブランクーシ、左から《王妃 X》1915–16年(2016年鋳造)ブランクーシ・エステート;《肖像》1930年、ブランクーシ・エステート;《若い男のトルソ》1924年(2017年鋳造)ブランクーシ・エステート;《ポガニー嬢Ⅱ》1925年(2006年鋳造)石橋財団アーティゾン美術館;《洗練された若い女性(ナンシー・キュナールの肖像)》1928–32年(2013年鋳造)ブランクーシ・エステート Photo: Alma Reyes

画家がパリで出会ったハンガリー人の画学生をモデルにした《ポガニー嬢Ⅱ》も印象的だ。女性の頭部は小さな球体の輪郭で、アーモンド形の目が目立ち、後ろ髪は滝のように流れている。《洗練された若い女性(ナンシー・キュナールの肖像)》(1928–32年;2013年鋳造)は、ブランクーシの友人であった芸術家、ナンシー・キュナールから着想を得た「肖像」である。その姿は、一風変わった、完全に抽象的な卵形へと簡略化されており、それは体を捻った動作を暗示している。


コンスタンティン・ブランクーシ《アトリエの眺め、「無限柱」、「ポガニー嬢Ⅱ」》1925年、東京都写真美術館

パリのモンパルナスを拠点としたブランクーシのアトリエと作品を彼自身が撮影したモノクロ写真が多数展示されている。撮影の対象は基本的に自身の作品であるが、その展示空間にもスポットが当てられている。ブランクーシは1910年代半ばより写真に没頭し、自らの彫刻の潜在的な側面を引き出すための拡張ツールとして写真を使用。自身の作品の再解釈と業績に対する記念碑的なオマージュとして、その空間を日常的に写真に記録した。そのアトリエは、マルセル・デュシャンやイサム・ノグチといった伝説的な芸術家たちとの交流を深め、多くの芸術家たちが頻繁に訪れる場所となった。


コンスタンティン・ブランクーシ《鳥》1930年、ブランクーシ・エステート

1910年代頃、ブランクーシはルーマニアの民話に登場する鳥に魅せられ、鳥への強い憧れを抱くようになった。神話に登場するこの鳥は、平和、調和、そして人生を高める永遠の探求を象徴すると言われていた。ブランクーシの芸術において、鳥は自由と限りない天空を志向する飛翔の運動自体に焦点が当てられている。これらは、《空間の鳥》(1926年;1982年鋳造)、そして無限の象徴としての飛翔を描いた珍しいフレスコ画《鳥》(1930年)に反映されている。

写実的なフォルムを超越し、自然や神秘主義をその優美なフォルムによって言い換えようとしたブランクーシの大胆な試みは、後世の芸術家たちに大きな影響を与えた。

ブランクーシ 本質を象る
会期:2024年3月30日(土)〜7月7日(日)
開館時間:10:00〜18:00(5月3日を除く金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.artizon.museum

同時開催:石橋財団コレクション選(5・4階 展示室)特集コーナー
展示 清水多嘉示(4階 展示室)

Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
Photos: Courtesy of Artizon Museum, Ishibashi Foundation

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