FIAC 2009
HAPPENINGText: Kana Sunayama
昨今のアートフェアにおいては、その成功の度合いが数字で語られることが常であるが、今年の「FIAC」(Foire Internationale d’Art Contemporain /国際現代アートフェア)でも様々な角度から数字によって彩られた。
まずは450。これはこのイベントの主役とも言えるギャラリーたちの、グランパレにおける一平米のブース料金。世界中に数えきれないほど存在するアートフェアのなかでも、 FIACは各ギャラリーがオーガナイザーに支払うブース代が、歴史、質、量、売り上げ、評価、全てにおいて世界一の現代アートフェアとして君臨するアート・バーゼルよりも高い。
次に28。28ユーロは、グランパレとルーブル美術館の中庭に仮説設置されたクール・カレ・ド・ルーブルの、二つの会場に入るための一般料金。ルーブル美術館で開催されている全ての展覧会と常設展へのアクセス料金が14ユーロ、ポンピドゥーセンターは12ユーロであることを考えると、これはアートに親しむビジターにとっては破格の料金と言える。
「28ユーロ!?そんなに払ってまで…?!」とアート界関係者もパリのアートラバーも開いた口がふさがらなかったにも関わらず、オープニングパーティを合わせた計5日間で計8万人が FIACを訪れた。
予想の6万人を大幅に上回り、昨年の23%増となった。そのうちの40%が外国からのビジターであったことは、 FIACの国際化成功とニューヨークやロンドンと比べて経済不況、アート恐慌の影響が少ないと言われているパリのアート業界に対する期待がうかがえる。
今年の FIAC を数字の面でも質の面でも盛り上げるのに一役買った新しい企画が二つある。
一つ目はグランパレで開催された「モダンプロジェクト」。アクアヴェッラ、ガゴジアン、L+M 、ペイスワイルドステイン、ベイエラーなど、世界屈指の近現代美術を扱う10のギャラリーが、グランパレ内の約300平米の空間に、歴史的重要性を持つ作品を各自三点だけ展示した、2009年の FIACの期間だけ設置された「ミニミュージアム」とも呼べる企画だ。
ここに展示されたフランシス・ベーコンの作品は、基本的に売り物というわけではないが、持ち主のアクアヴェッラ・ギャラリーは2千万ドルからなら交渉に応じる可能性もあると答えた。また、フェルナン・レジェーの素晴らしい「Le Grand Dejeuner」は、2千万から2千5百万ユーロの価格で世界のどこかの美術館にリザーブ済みだということだ。
他にもモンドリアン、ピカソ、ブランクーシ、マックス・ベックマン、アレクサンダー・カルダーなどの現代アートの巨匠たちの作品を見ようと、グランパレに入るために何時間も寒空の下で待ち続けたビジターたちは、ここでも列を作ることとなった。
FIAC主催者サイドとしてはもちろん、これら大手ギャラリーにこの「モダンプロジェクト」への参加をきっかけとして、将来的に FIACの一般ブースの方への参加を導こうという意図があるに違いないが、今年の時点ではどの大手ギャラリーも来年のFIACへの参加意図は示していない。
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