レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才
HAPPENINGText: Alma Reyes
シーレは、禁欲的で保守的であるとみなしていた伝統的芸術を打破するための激しい執着心を募らせていた。赤裸々なポーズをとったグロテスクでエロティックなヌードを描いていたが、当時は一般的には露骨すぎて過激であると判断された。本展では、脚を開く、下半身を露出させるといった性的なポーズをとる作品が展示されており、狼狽と好奇心によって我々は放心状態となる。
エゴン・シーレ《頭を下げてひざまずく女性》(1915年)鉛筆、グワッシュ/紙、レオポルド美術館蔵
《頭を下げてひざまずく女》(1915年)では、左脚のストッキングが詳細に描かれており、色がぼかされた右脚よりも近くにみえるようにされていることで遠近感が表現されている。滑らかな曲線が律動的な動きを生み、露わな肌と我々を戸惑わせるスリップを強調する。
エゴン・シーレ《モルダウ河畔のクルマウ(小さな街IV)》(1914年)油彩、黒チョーク/カンヴァス、レオポルド美術館蔵
シーレは、クルマウ(現在のチェコ チェスキー・クルムロフ)周辺の静かな風景や街並み、オーストリアの田園風景も描いている。《小さな町III》(1913年)、《モルダウ河畔のクルマウ(小さな町IV)》(1914年)など、周りの自然とほの暗くいろいろな表情を見せる家々とが織りなすメロディックな構成には、まるでおとぎの国のような雰囲気が閉じ込められている。
本展では、エゴン・シーレの表現の追求において重要な役割を果たしたコロマン・モーザー(《キンセンカ》1909年)、リヒャルト・ゲルストル(《半裸の自画像》1902/04年)、グスタフ・クリムト(《シェーンブルン庭園風景》1916年)、オスカー・ココシュカ(《ハーマン・シュヴァルツバルト2世》1916年)、その他ウィーン分離派の作家らによる傑作もシーレの作品とともに展示されている。1918年、シーレは妊娠中の妻エーディトの後を追うようにその死の3日後スペイン風邪によりこの世を去った。彼の作品は、比類なき偉大さすら感じさせ、煮えたぎる情熱、恐れからの解放、躍動する生命力の残響が今なお我々を揺さぶる。
レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才
会期:2023年1月26日(木)〜4月9日(日)
開館時間:9:30~17:30(最終入室17:00)金曜日は20:00まで
休室日:月曜日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
TEL:03-3823-6921
https://www.egonschiele2023.jp
Text: Alma Reyes
Translation: Yuko Shimohara
Photos: Courtesy of Tokyo Metropolitan Art Museum