マーティン・ショーラー「クローズ・アップ」展
HAPPENINGText: Victor Moreno
辞書によると、ポートレイトとは顔や表情の中にその人物を表現したものである。つまり、肖像、人格、気分さえ写し取るということ。「自撮り」が増えた現在、毎日撮影される膨大なポートレイト数は過去に例を見ない。雑誌「ニューヨーカー」のドイツ局員だったマーティン・ショーラー(1968〜)は、デジタル写真の技術を活用しながら、ポートレイト写真の概念をステップアップ、すなわち大きなサイズのポートレイトを撮影することを決断。世界中のギャラリーや美術館にて数えきれないほどの有名人の顔を撮影してきた。
Martin Schoeller, Angelina Jolie, Portrait “Up Close and Personal”
例えば7m四方のアンジェリーナ・ジョリーの写真は、モバイル上ではまた違った見え方をする。2015年10月からこの2月7日まで、スウェーデン写真美術館「フォトグラフィスカ」では、そんなショーラーの最新プロジェクト「クローズ・アップ」が展示されていた。またその他のプロジェクト「一卵性」や「女性ボディビルダー」作品も鑑賞することもできた。
Martin Schoeller, Clint Eastwood, Portrait “Up Close and Personal”
人は、人に関心を持つ。私たちが有名アーティストの展覧会へ行く時は、アーティストについてのポジティブな情報を耳にするのがほとんどだ。しかし本展はその逆で、アーティストについてはほぼ知らないけれど、(ポートレイトになっている)有名人たちに興味関心を持っているという鑑賞者が多い。それがいいか悪いかは別として、確かにこの「クローズ・アップ」展ではほとんどが著名人ばかりだ。
Martin Schoeller, Rihanna, Portrait “Up Close and Personal”
会場で、人々が「あれは誰?」と口々に同じ質問をしているのを耳にするだろう。女性はテイラー・ウィフトやメッシを知らないし、男性はマーク・ザッカーバーグを、10代の若者はクリント・イーストウッドやジュディ・デンチを知らない。もしショーラーが、年齢や文化的関心に関係なく“有名人の顔”という認識や人気を求めているとすれば、鑑賞者らは全員ポートレイトの人物を知っているだろうし、現代文化を揺り動かすという意味ではいいことである。
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