ミルクシェイク

PEOPLEText: Aya Shomura

OOO Projectsの後藤氏との共同企画とのことですが、どのようにしてスタートしたのでしょうか?

初めて彼のことを知ったのは、彼が編集長を担当していた日本タイポグラフィ協会の広報誌「タイポグラフィクス・ティー」の取材でした。彼は2011〜2013年の2年間、アジアの都市を取り上げた同誌の特集「タイプ・トリップ」を担当していたのですが、263号の香港特集で私にインタビューをしてくれたのです。それを機に2013年に大阪のdddギャラリーで開催された「タイプ・トリップ」展にも関わることになり、2014年1月には香港で同展を企画、開催するほど親交が深まりました。

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“Type Trip – The New Asian Graphic Design Exhibition”, Exhibition curation in collaboration with OOO Projects, 2014, K11 art space (Hong Kong) / DNP Foundation for Cultural Promotion (Japan)

2015年に雑誌アイディアの、アジアのデザイナーと各都市の社会的文脈について深く切り込むインタビュー特集「イエローページ」シリーズの取材で、彼が再び私に声をかけてくれました。一緒に取材旅行をするうちに、アジアにおけるデザインや都市で現在起こっていることに非常に興味を持つようになったのです。

旅行中、私たちは「次に何をすべきか」について話し合い、一方でグラフィック・デザイナーとしての心境も共有し合ううちに、これまでの私たちの視野とは異なる何かをなすべき時が来たと感じました。実際に、私たち2人も別々のバックグラウンドを持っています。彼はデザイナーであり、ライター、編集者、キュレーターという顔も持っているし、私も中国のデザイン雑誌の編集をしたり展覧会の企画も行なってきました。そして、デザイントークなど異なる形式やコンテンツで各クリエイターが互いにプレゼンを行い、コラボレーションすることに意味があると考えるようになりました。

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The University of Hong Kong Department of Architecture – Public Lecture Series 2015-2016

日本でも数年前から「ノマドワーカー」というスタイルが出現してきました。こうした状況をどのように捉えていらっしゃいますか?(クリエイターに限らず)これは自然な動きでしょうか、または流動的なワーキングスタイルの途上だとお考えですか?

私たちはデザイナーとのシェアや対話だけではなく、旅行先で様々なクリエイターと出会うことも大好きです。インターネットやソーシャルメディアの発達に伴い働き方は様変わりし、スタジオにこもって仕事をしたりチームを拡大させたりする代わりに、自分自身が「移動」しながらクリエイションを行ないたいと思うようになってきましたよね。それが「モバイル・トーク」という名前の由来です。

また、ミルクシェイクのチームも「モバイル・スタジオ」へと転換する予定です。プロジェクトや場所を問わずチームでの仕事をしながら、個人個人としても働くことができるのです。

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POST PiXEL. Animamix Biennale 2015-16

若い世代の興味の対象は昔とは全く異なり、今の彼らが望むものはフルタイムでの勤務経歴やキャリアではなく、フレキシブルで充実した人生だろうと思います。アジアではまだ多くの人々が職業や肩書き、給料を判断基準にしていると思っているかもしれませんが、クリエイティブを職業とする人たちはおそらく違う視点でチャレンジしているはずだと私は信じています。移動しながら自在に働くことは、あなたが何か新しいことを学び知る次なるステップの選択肢であり、自分自身のリフレッシュにも繋がることでしょう。

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Mobile Talk 2016 #01 Osaka

本企画の狙い、目的を教えて下さい。

「モバイル・トーク」を通じて、スケールは小さいけれどデザイナー同士の情報シェアやディスカッションの新しいスタイルを作り、並行して進めているプラットフォーム・プロジェクト「モバイル・ペーパー」では、将来的にデザインに関するコンテンツや出来事を紹介するプラットフォームを作りたいです。そして色々な都市で「モバイル・展覧会」を展開し、各地での動きをアーカイブしていきたいとも考えています。

今年のテーマ「#インディペンデント/#コレクティヴ」(個/集合体)は、実は「移動」というコンセプトに対する私たちなりの答えでもあります。異なる都市をバックグラウンドに持つゲストたちが、自分たちのプロジェクトやストーリーを持ち寄り、このテーマにどんな反応を示すのかが今から楽しみです。大阪から始まる本イベントが、香港、台北と続くなかでこのテーマが反響を呼び、拡散されることを願っています。

最後に、若いクリエイターへメッセージをお願いします。

「独立した個として活動し、集合体として思考せよ」

Mobile Talk 2016 #1 OSAKA
日時:2016年7月30日(土)15:00〜18:00
会場:FLAG studio
住所:大阪市西区江之子島2-1-37 阿波座ライズタワーズフラッグ46 1階
登壇者:ナ・キム(韓国/グラフィックデザイナー)、オウ・ニン(中国/キュレーター)、キース・ラム(香港/ニューメディア・アーティスト、メイカースペース「LAB」主宰)、ヤン・ヨウ(中国/独立系写真出版社「Jiazazhi Press」主宰)
進行:後藤哲也(OOO Projects)※逐次通訳有
主催:DECOBOCO
企画・運営:OOO Projects、Milkxhake
料金:前売4,000円/当日4,500円(軽食と1ドリンク付)※要予約
http://www.enokojima.info

Text: Aya Shomura
Photos: Courtesy of Milkxhake

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