「ウェイト・オブ・ヒストリー」展
美術館に足を踏み入れ、巨大なインスタレーションを見たとき、一体誰が購入しているのか疑問に思ったことはないだろうか。シンガポール美術館で開催された展覧会「ウェイト・オブ・ヒストリー」は、そんな疑問に少しだけ答えてくれる。今回、一般公開されたのは、プライベート・コレクションから集められた20点以上の貴重な作品。どれも、アジアの現代アートにおいて重要な作品だ。
アジア特有のテーマを扱う本展覧会は、刺激的でワクワクするような空間となっていた。
中国人アーティスト、シュー・ビンによる「リビング・ワード」は、形から文字へと発展した中国語の象形文字を作品としたもの。詩的で優雅な鳥の群れが、中国語の繁体字、簡体字へと形を変えながら、言葉や意味の本質へと回帰し、歴史を記述する。下降していく鳥と文字、空間に落とされたその影は、まるで時が止まったかのような印象だ。中国語の統一、簡略化、方言、アクセントなど、複雑な問題を含むインスタレーション。
韓国人アーティスト、イ・スギョンによる「トランスレイテッド・ベース」は、シュー・ビンの軽やかな作品とは対照的に、陶器の断片やその他のフォルムを使って複雑な形状をなした彫刻だ。泡、瓦礫、山…様々な形に見える作品は、いびつでありつつエレガントだ。イ・スギョンによる再構築には、緊張感と調和が共存している。オブジェの再利用や、あらゆる時代の様々な陶器を使用することで、過去と現在を融合した作品。
アーティスト・ヴィレッジの設立者、タン・ダウの「セイム・セイム・アンド・ノー・ディファレンス・ビトウィーン・ユニティ・アンド・セルフディストラクション」は、日用品であるハンマーを釘で固定した作品で、暴力的であると同時に詩的な雰囲気も併せ持つ。シンガポールの地域的・社会的状況を象徴する本作品は、人生において人が自分自身と他者にもたらす矛盾についての作家の見解も反映している。
チベット出身の現代美術作家、ゴンカル・ギャツォによる「エクスキューズ・ミー・ワイル・アイ・キス・ザ・スカイ」は、宗教と大衆文化の融合を試みた作品。資本主義と消費者の台頭により、宗教は大衆文化と争うようになった。信者同士が対立する中、宗教は大衆文化に順応すべきか、それともそれを否定するべきか。アーティスト自身の経験を出発点とした本作品では、ステッカーで覆われた仏陀像が中心に設置され、一連のコラージュ作品に取り囲まれている。「108 バーニング・クエスチョンズ」は、資本主義社会における社会的、政治的、宗教的ジレンマと対立を表現した作品。
アジアのプライベート・コレクションを巡る旅となる本展覧会は、歴史的対立、文化的ルーツの維持、宗教の中心的役割、生と死といったテーマを空間に現した。そのようなテーマを展示会場で見ると、不安や楽しさといった感情が湧いてくる。結局、歴史がそのような重荷となる必要はないようだ。
The Collectors Show: Weight of History
会期:2013年1月25日(金)〜5月5日(日)
会場:Singapore Art Museum
住所:71 Bras Basah Road, Singapore
https://www.singaporeartmuseum.sg
Text: Fann ZJ
Translation: Yumiko Sato
Photos: Fann ZJ