アート・ベルリン・コンテンポラリー 2012
同じくベルリンのギャラリーヴェントルップでは、ティム・ウルリッヒが巨大な木造の構造物を見せていた。
彼の作品は平屋の建物にも見えるが、そこには壁が一切なく、あるのは柱と扉のみ。作品内にある多数の扉はきしんだ音を立てながら自動で開け閉めが繰り替えされている。壁の無いアートフェアでの壁の無い作品には、多くの来場者が導かれるように引き込まれていた。
Timm Ulrich. Photo: Stefan Korte
またロンドンのギャラリーIBIDが見せるデヴィッド・アダモの作品は、巨大でも派手でもないものだが強い印象を残している。展示スペースのコンクリートの床には柱のような木の角材を削り出したものが並ぶ。一方でスペース横に延びる階段にもはみだすかのように同様の作品が置かれている。彫刻の本質と向き合おうとする作品は無機質な展示空間を取り込み、作品そのものだけでなく展示空間へと視線を向けさせるものとなっていた。
David Adamo. Photo: Marco Funke
それ以外ではギャラリーカリエ | ゲバウアーのローザ・バルバの映像のあり方を探る作品や、ギャラリーKOWのクレメンス・フォン・ウェデマイヤーによる場所と映像の関係を扱うインスタレーション作品、そしてギャラリーマックス・ヘッツラーのモナ・ハトゥムによるアーティスト自身の生い立ちを伝えるポリティカルな作品のように、いずれのギャラリーも個性的な作品を競うように展示をしており、abcの特殊性を更に強めていた。
Photo: Marco Funke
こうしたabcの特徴は、作品販売を至上とするアートフェアに対向して、作品販売も行う展覧会として多くのギャラリーが集まって始まったことに起因している。開催初期の頃にはテーマが設けられており、2009年にはパブリックスペースでのアートプロジェクトのアイディアをテーマに参加ギャラリーは作品を展示していた。ただし同一形態の机を利用して作品を展示することが条件となっており、机を展示作品の台にするもの、プロジェクター用のスクリーンに用いるもの、机そのものを変形させ作品にしてしまうものさえあった。
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