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アート・ベルリン・コンテンポラリー 2012

HAPPENINGText: Kiyohide Hayashi

そこではコレクター向けの商品と化した美術作品を見ることはなく、ギャラリーやアーティストのテーマに対する取り組みが見られ、美術作品が本来あるべき姿として並ぶ展覧会にもなっていたのだ。このようなabcの企画や作品を中心とした構成は、作品販売を中心に構成されたアートフォーラムベルリンと強烈な対比を生み出し、アートフェアのあり方を深く考えさせるものとなっていたのである。

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abc Installation view. Photo: © Stefan Korte

そして2011年このようなライバル関係にあったアートフォーラム・ベルリンが中止となり、以降ベルリンの秋のアートシーンはabcの独壇場となっている。不安視されたアートフォーラム・ベルリンの不在はabcの独自の発展に補完されたということができるだろう。2011年の開催の際には絵画作品にテーマを絞り、コレクター好みのものに対応している。そして本年の開催にいたっては特定のテーマを与えることなく、より自由な形で各ギャラリーは展示を行うことができるようになったのだ。こうしてabcは本来の性格を保ちつつも通常のアートフェアの性格を兼ね備えることになっていく。

現在のabcの姿はベルリンの混沌としたアートシーンから生み出された状況の産物と言うことができるかもしれない。ただし結果として二つの傾向を持つことにより、従来成し得ないことが成立している。それはアートフェアでの「アーティストを紹介する場」と「作品を販売する場」の両立である。

アートフェアの過度な商業主義の追求はアーティストを商品制作へと駆り立てることになり、そこでの美術作品のあり方については常に批判が生じている。しかしギャラリーは作品を販売することなくアーティストを紹介し続けることはできない。まして作品販売のために多くのコレクターを引き寄せるアートフェアは必要不可欠なのである。ただし、そこではコレクターのみを対象にするのでなく、それ以外の人々にも作品を紹介しなくてはいけないのだ。

今回のabcでは、その問題の解決を見出そうとしていたと言えるだろう。少なくともここでは様々な人々が混じり合うことが可能となっていた。新しい美術作品を目当てに訪れる一般客。作品の販売とアーティストの紹介を行うギャラリーのギャラリスト。作品購入を目的としてやってくるコレクター。そして自らの作品を「美術作品」として展示を行うアーティスト。様々な人々が行き交うことになったabc は新しいアートフェアの姿をアピールすると共に、まだなお新しいものを生み出そうとするベルリンのアートシーンの底力を強く印象付けたに違いない。

art berlin contemporary 2012
会期:2012年9月13日(木)~16日(日)
会場:STATION-BERLIN
住所:Luckenwalder Strasse 4-6 10963 Berlin
入場料:8 Euro
https://www.artberlincontemporary.com

Text: Kiyohide Hayashi

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