澁谷俊彦
PEOPLEText: Satsuki Miyanishi
スノースケープなどの作品は、雪のある北海道ならではの表現ですね。アートによって長い北海道の冬が楽しめる、そんな作品です。
2010年の北海道立体表現展(札幌芸術の森美術館)では蛍光塗料を支持体裏面に塗布したオブジェを使った反射光の作品を発表しました。ここでは前述と異なり空間はホワイトキューブでなくてはなりませんでした。反射をより効率的に引き出すには空間が白いことが前提となるからです。そして幾つかの展覧会でこの作品(コンペイトウシリーズ)を発表するうちに、白くなければ成立しないのであれば、いっそ雪の中へセッティングできないものかと試行されたのが今年の2月のスノースケープモエレ6での作品、雪上インスタレーション「SNOW PALLET」です。
澁谷俊彦「SNOW PALLET」2011年, スノースケープモエレ6(モエレ沼公園) 写真:川村魚実
鉄製の円盤状オブジェは裏面に塗布された蛍光塗料によって雪面に鮮やかな色の影を放ちます。オブジェには幾つかの高さのことなるものがあり、積雪量によってその反射効果が変わり日々異なる景色を見ることができます。低いものは雪に埋もれ、その存在を消し去り高いものは積雪が増えた状態で初めて輝きを雪面に描き出します。雪面の反射率はとても高く、実は晴天よりも曇天のほうが影色はよく映えます。全ては天候に左右されてしまうわけですが、自然相手のアートとはこういうものだとわたしは思っております。対峙したところで所詮一人の人間の所作が敵う相手ではありません。自然をコントロール(支配)するのではなく、寄り添うように上手に利用していくことだと思うのです。
意外なことにこれまで、「冬・雪」といったモチーフが現代美術で積極的に取り込まれたことはここ北海道ではあまりありません。わたしの取り組みが単なる雪像ではない冬のアートのアプローチのきっかけになってくれたら、と望みます。冬は嫌われ者ですが(巣篭もりすることなく)、視点を変えてみることで未来の可能性が広がります。雪国ならではの新しいアートが、ここ北海道・札幌から発信できたらいいですね。
クロスホテル札幌では新作を発表されるそうですね。作品について教えてください。
作品タイトルは「風の森」です。実は来年2月にモエレ沼公園で行われる「スノースケープモエレ」用にシミュレーションしていたものを都市型に変化させたものに改良し、前倒しで発表します。
風になびく動くオブジェによるインスタレーションです。
澁谷俊彦「風の森」2011年, クロスホテル札幌 写真:川村魚実
最後にメッセージなどお願いします。
派手なこと、斬新なことはできませんが、それでもなにかムーブメントが起こせたらいいな、と思っております。一人で叶うことができなければ、みんなで協力し合いましょう。日々個々の努力を怠ることなく精一杯な自分でありたいと願っております。
「MYSTIQUES ミスティークス」展
会期:2011年12月5日(月)〜2012年2月29日(水)
オープニングレセプション:12月4日(日) 18時〜
会場:クロスホテル札幌
住所:札幌市中央区北2西2
主催:クロスホテル札幌(企画部 011-272-0051)
キュレーション:クラークギャラリー+SHIFT
出品作家:青木美歌、飴谷 等、櫻井清隆、澁谷俊彦、中 新、橋口潤平、針、矢柳 剛、ワビサビ
https://crossmet.jp/sapporo/
札幌芸術の森美術館 中庭インスタレーション
澁谷俊彦「SNOW PALLET」
会期:2011年12月23日(金)〜2012年3月7日(水)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)及び年末年始
会場:札幌芸術の森美術館 中庭
住所:札幌市南区芸術の森2丁目
TEL:011-591-0090
https://sapporo-art-museum.jp
Text: Satsuki Miyanishi