澁谷俊彦「ウォーターパレット」
THINGSText: Aya Shomura
北海道を拠点に雪国ならではの新しいアート表現に挑み続ける数少ない作家・澁谷俊彦の新作「ウォーターパレット」が、この夏、札幌芸術の森野外美術館にあるダニ・カラヴァン作「隠された庭への道」 作品内に展示される。これは「スプラウティング・ガーデン ー萌ゆる森ー」展への設置作品のひとつでもある。
Photo: Courtesy of the Artist © Toshihiko Shibuya
ダニ・カラヴァンのこの作品コンセプトは数字の「7」がカギとなっている。7基の設置オブジェ、全長70メートルの「水路」、7メートルの蛇行半径、「門1」「門2」の高さ7メートルなど。彼はイスラエル、テルアビブの出身で、7はユダヤ教に深く起因するのである。「神は6日で世界をつくり、7日目に休息をとった」と聖書にあり、イスラエルでは耕作地を7年ごとに休ませる習慣があるという。虹の色数や一週間の日数など、人間は古くから「7」と深く関わって生活してきた。数は人間の様々な体験の中から生まれたもので、生命のリズム・環境・宇宙に通じるその場との関係であるとカラヴァンは語る。
Photo: Courtesy of the Artist © Toshihiko Shibuya
今回、澁谷はカラヴァンと彼の作品への敬意を表すため、この「7」を自らの「ウォーターパレット」にも引用し、浮遊型オブジェ(小)直径7cm を7基、浮遊型オブジェ(中)半径7cm を7基、水上オブジェ直径 70 cm を7基、埋没型オブジェを7基とした。
Photo: Courtesy of the Artist © Toshihiko Shibuya
また、これまで雪や氷という地域環境のなかで発表してきたシリーズ「スノーパレット」や「アイスパレット」とは、オブジェの大きさも形も趣きも変え、水という物質の透視性を生かし、水上だけでなく水中にも作品そのものを浸すことで新たな展開をみせる。
Photo: Courtesy of the Artist © Toshihiko Shibuya
日々移り変わる自然の色のなかで、そよぐ風に生じる水面の漣と呼応して右へ左へと動くオブジェは、時の経つのさえ忘れさせる。カラヴァンの作品を背景に、水面の波紋とオブジェの形が重なり合う雨の日も、どのように表情をかえていくのか楽しみである。
澁谷俊彦 インスタレーション「ウォーターパレット」
「Sprouting Garden ー萌ゆる森ー」
会期:2014年7月5日(土)〜11月3日(月/祝)
時間:9:00~17:30(9月以降は17:00まで)
会場:札幌芸術の森屋外スペース、札幌芸術の森野外美術館、佐藤忠良記念子どもアトリエ、関口雄揮記念美術館
観覧料:高校生以上900円、中学生以下無料
主催:札幌芸術の森美術館(札幌市芸術文化財団)、関口雄揮記念美術館
後援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会
出品作家:會田千夏、阿部典英、伊藤幸子、上ノ大作、柿崎熙、果澄、川上りえ、国松明日香、佐藤あゆみ、澁谷俊彦、下沢敏也、関口雄揮、ダムダンライ、藤沢レオ、菱野史彦、森迫暁夫、山田良、艾沢詳子、
住所:北海道札幌市南区芸術の森2−75
TEL:011-591-0090
https://artpark.or.jp
Text: Aya Shomura
Photos: Courtesy of the artist © Toshihiko Shibuya