スプラウティング・ガーデン ー萌ゆる森ー

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

北海道にゆかりのある作家18人が、札幌南部に広がる丘陵地を舞台として「芽吹く、生長する」転じて「広がる、拡張する」という意味を持つ単語「スプラウト」をテーマとした作品により「札幌芸術の森という空間の可能性を拡張する」という新たな企画展が7月から開催されている。野外美術館ゾーンとパークゾーン(美術館やアトリエが点在する園内各所)では、屋外ならではの壮大な新作インスタレーションが見られるほか、後述する2つの屋内スペースでは日本画や油彩画、シルクスクリーンなども展示されている。

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ロゴマークは、札幌芸術の森美術館が今回初めて実施したコンペティションにより、北海道に根を下ろしながら全国へ活躍の場を広げているデザインコンビ「ワビサビ」の作品が選出された。

彼らの代表作であるタイポグラフィー「ホルモン」は、元々内臓をモチーフとしたもので、本展のイメージとはかけ離れているようだが、驚いたことにテーマ「スプラウト」を一目で象徴している。このビジュアルは各所の案内板にも使用され、常設作品等も混在する広大な敷地内において、本展の作品を辿る道標となっている。

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「また、いってきます」ダム・ダン・ライ、2014年 Photo: © 前澤良彰

通常の野外美術館には、木々が生い茂る森の中に74点の現代彫刻が常設されており、1999年のダニ・カラヴァン作「隠された庭への道」が完成して以来、新作が設置されたのは15年間ぶりとなるそうだ。

ゲート入口の池では、ベトナム出身のダム・ダン・ライによる高さ7mものインスタレーション「また、いってきます」が、天へ向けて真っ直ぐ突き出るように立っている。まるで、地中に蓄積されていた森の生命エネルギーが強烈に噴出・飛散する瞬間を捉えたような造形だ。鮮烈な色彩は足を踏み入れた者を圧倒するが、本来存在していたものが可視化されたかのようでもあり、この場において違和感がない。

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「Air Garden/空の枯山水」山田良、2014年 Photo: © 前澤良彰

アート、建築、ランドスケープデザインを融合させた作品で知られる山田良は、石や鉄を素材とした常設作品に囲まれた丘陵風景の中に、それらの堅牢さとは対照的な木の廃材を用い、全長14.5mの構造体「Air Garden / 空の枯山水」を仮設した。

斜面を水平に伸びる桟橋の先端は地上4.2mもの高さになるにも関わらず、道幅は僅か60cm、掴まる手すりや柵は一切無い。毎日、時間限定での開放となるが、辿り着いた先には未開の風景が広がるだろう。離れて全体を眺めてみても、景観の新たな捉え方により、見慣れた環境の可能性を呼び覚ましてくれるような作品だ。

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