アート・ドバイ 2011

HAPPENINGText: Mamiko Kawakami

アート・ドバイ前のある日、あるイラン人の若者がドバイのあちこちの店で袋いっぱいのナイフやおもちゃの刀を買って行った。店員はちょっと不可解に思ったかもしれないが、この男性が著名イラン人アーティスト、ファルハド・モシリだった。

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‘Shukran’, Farhad Moshiri, 2011

集められた数知れないナイフやおもちゃの刀は、サード・ライン・ギャラリーの壁一面に用意された白い木製カンバスに突き刺された。ランダムにも見えるそのナイフの列はアラビア語で [Shukran](ありがとうの意味)と綴られている。

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‘Shukran’, Farhad Moshiri, 2011

鋭利で人をも傷つけ得るナイフや刀で温かい言葉を綴る。このコントラストがまさにモシリの狙いだろう。『直感で作品の素材を選ぶ』とモシリ。『ナイフが使われて作品に鋭さが出る。その対照的なアイディアが好きなんだ。ドバイはいつも私の作品を支援してくれ、出展は非常に満足のいくものになった。』

モシリは中東のアンディー・ウォホールとも言われ、ドバイのオークションで彼の作品が100万ドル(約8,000万円)で売られたこともある。

今年のアート・ドバイには、特別なコンセプトを持ったブースもあった。今年のエジプト革命に参加したアーティストを数多く持つ、アートスペースだ。このドバイをベースにしたギャラリーは、アート作品展示に加え、タヒリール広場のデモのドキュメンタリービデオを上映。

『エジプトのデモにはあらゆる職業の人々が参加した。』アートスペース創設者・責任者のマリハ・アル‐タバリは地元新聞に同ギャラリーのコンセプトを次のように説明する。『アート・ドバイではぜひ政治事情を取り上げたブースを作りたかった。この厳しい情勢下で人々の興味は単にいわゆる綺麗なアートだけに留まらないだろうから』と。

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‘Bye Bye Hosni’, Zakaria Ramhani, Acrylic on Canvas, 200 x 240 cm, 2011. Courtesy of Artspace Gallery

モロッコ人アーティスト、ザカリア・ラムハニの「バイバイ 、ホスニ」は、エジプトの前独裁者ホスニ・ムバラク大統領の街頭ポスターがアラビア語のグラフィティで覆われ、それをフェイスブックの「いいね」ボタンTシャツを着たデモ参加者がはがしているという面白い作品。

同ギャラリーには、エジプトのデモでゴム弾に当たり片目を失明してしまったアーティスト、モハメド・タマンの作品も展示された。その他にもタヒリール広場デモに参加したエジプト人アーティスト、ナディン・ハマンカリッド・ハフェズの作品もみられた。

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葛西由香
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