第14回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Memi Mizukami

エンターテイメントの部門で受賞した作品は、やはり時代性を感じるものだ。

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HAYASHI Tomohiko / SENBO Kensuke / KOYAMA Tomohiko “IS Parade”

大賞作品「IS Parade」がツイッターを用いたものであるのを筆頭に、iPadやiPhoneを用いた作品が目立つ。このような大きな受賞作品に対して観客として、あるいはユーザーとしての自分が自然にメディア芸術の中で生き、時代に参加しているのだという実感を感じることができるだろう。

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アニメーション部門大賞『四畳半神話大系』 湯浅 政明 © 四畳半主義者の会

アニメーション部門で大賞を受賞した、湯浅政明による「四畳半神話体系」はその題名もさることながら、従来のアニメーションと比較してみても明らかにイラストレーションとしての美しさが目に止まる。饒舌な主人公の心情はテンボ良く物語を進ませ、観る者を引き込ます魅力を持っている。今のテレビアニメの品質はここまで高いのかと少なからず驚くはずだ。

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マンガ部門大賞『ヒストリエ』 岩明 均 © 岩明 均/講談社

自分たちの目が、何を新鮮に思うかというのは、時代ごとに変わるものだ。だからこそ漫画という部門がこの芸術祭に設けられていることは、非常に興味深いのではないだろうか。今回大賞を受賞した作品は岩明均による「ヒストリエ」という作品であるが、内容は紀元前の話であり、漫画自体もまだ完結していない。メディア芸術祭における漫画作品であるということは、時代性を伴う必要があるとする。するとこの、未来ではなく過去を扱った未完の作品という点に何か漫画におけるメディア性を感じざるを得ない。その他の受賞作品にも歴史を扱ったものが多く見受けられたこともあり、メディアアートやエンターテイメントが未来感を待ち望むのに対し、漫画という日本の文化は過去への想いを馳せているのかもしれない。

そして最後に、授賞式で今回功労賞を受賞した栗原良幸は「漫画」を文化として世界に普及させた名編集者であり、ユーモアのあるキャラクターで自信に満ちた素晴らしいスピーチをしてくれた。『日本のマンガは2コマからなる。面白い2コマが思い浮かべば、それは何千コマのマンガを生み出す出発点になる』この言葉はメディア芸術において全てに置き換わるのではないだろうか。会期は2月13日までと、さほど長くはないので、是非沢山の作品をご覧になって頂きたい。来年も楽しみにこの芸術祭を待とうと思う。

第14回 文化庁メディア芸術祭
会期:2011年2月2日(水)~2月13日(日)
時間:10:00~18:00(金は20:00まで)※2月8日(火)は休館
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
観覧無料
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・国立新美術館・CG-ARTS協会)
問い:0120-454536(CG-ARTS協会内「文化庁メディア芸術祭事務局」)
https://plaza.bunka.go.jp

Text: Memi Mizukami

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