川元陽子
PEOPLEText: Mariko Takei
見る人の記憶にインパクトを与える『ただそこに在るだけの風景』。
90年代後半より独学で絵を描き始めたイラストレーター、川元陽子。これまでに国内外の展覧会で作品を発表する傍ら、作品集やCDジャケットワークなども手掛けるなど、絵の活動を行っている。そして、今回5月16日より、過去3年半の間に描き溜めたオイルペインティングを展示する個展「for the present」をNANZUKA UNDERGROUNDで開催する。
Yoko Kawamoto, Untitled, Oil on canvas, 606 × 409 mm, 2006, Courtesy of the artist and NANZUKA UNDERGROUND
生きている限り、わたしたちは日常の中で様々な風景を目にする。毎日の生活とは無関係故に、通り過ぎることもなく、見られることもない風景がこの世に無限にあるように、毎日の生活の中で通り過ぎ、忘れ去られてゆく風景もまた無限だ。そんな『見過ごされた』風景に着目して絵を描いているのが川元陽子氏である。
1967年に大分県で生まれた彼女は、仕事を辞めたことを機になんとなく絵を描き始めたという。そして、絵の活動を進めていくきっかけとなったのが、1998年のイラストレーション誌の公募展「ザ・チョイス」で入賞したことである。それ以来、淡々と絵を描き続け活動していく様は、まるで波にゆらゆらと揺られ潮の流れに身を任せながらも、オールを漕ぎながらいくつかの土地に辿り着いては、また絵を描く旅に出発しているかのように見える。
川元陽子個展「for the present」展示風景, NANZUKA UNDERGROUND, 2009.
1999年にROCKETにて個展「Ordinary Day」を開催して以来、ギャラリー・スピークフォーでは2度のグループ展に参加。更に、2001年に開催の仙台メディアテーク「MOVEMENT」展に参加し、そして2005年と2007年にはニューヨークのATMギャラリーでそれぞれグループ展「Remarkable Hands」と個展「Drifter」を行うなど、絵の発表する場を増やしてきた。
また、展覧会以外でも、ファンタスティック・プラスチック・マシーン「ZOO」のカバーワークや、イッセイミヤケのポストカードなどのビジュアルワークなども手がけている。
Yoko Kawamoto, Untitled, Oil on canvas, 606 × 375 mm, 2006, Courtesy of the artist and NANZUKA UNDERGROUND
『誰にも注目されずに、ただそこに在るだけ。と、いった感じのものが好きです』
川元氏の言葉にもあるように、描くモチーフは、スクラップ、捨てられた車、工場、動物、人物など、どこかで一度は通り過ぎたことのあるような人里離れた場所や、日常に目にしたことがあるけど忘れ去られてしまう何気ない風景といったものに一貫している。
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