スティーヴ・パクストン
PEOPLEText: Wakana Kawahito
Lisa Nelson “Night Stand”, Photo: Jordi Bover
あなたは今回、リサ・ネルソンと一緒にこの一連のプロジェクトを行っていますが、どのようにして二人は共演し始めたのですか?
1978年にデュエットを作り始め、それからずっと一緒に仕事をしてきました。21世紀になり、新しいものを作ろうと思い、今回東京で公演した作品を作りました。
あなたは、有機農業も行っていますが、農業とダンスはどのように繋がっているのですか?
体を生き生きと保つためのエクササイズをしていて、そのうちのあるものを私はダンスと呼び、そのうちのあるものを私は農作業と呼びます。ダンスで得たフォームを農作業にも使っています。例えば、背骨を意識して、雑草を刈ったりしています。また逆に、このワークショップでも、農作業で行うような動きを背骨を意識しておこなっています。
Phantom Exhibition, Steve Paxton with Florence Corin and Baptiste Andrien (Contredanse). Photo: Contredanse (Florence Corin and Baptiste Andrien)
ダンスや農作業以外に興味があることは何ですか?
脳科学、環境問題、芸術(絵画、彫刻、パフォーマンスなど)に興味があります。
具体的に興味がある人の名前をあげてくれますか?
環境学者のデイビッド鈴木、スペインの裁判官バルタザール・ガルゾン、国連人権高等弁務官のルイーズ・アルブール、国連事務総長アフリカ・エイズ問題特使のスティーブン・ルイスなどです。
あなたの作品には多くの即興がでてきますが、即興についてどうお考えですか?
人生そのものだと思います。スポーツには多くの即興がありますね。例えばサッカーの場合、あるルールの中でインプロビゼーションを行うことになる。大勢の大人がルールを決めてサッカーを行うが、ボール自体はルールに従う訳ではないのでそこには即興が必要となる。頭で考えていることだけではなく、体が動きだすこと。それが即興です。
そういえば、即興について、今朝ラジオでとても興味深いことを耳にしました。ロバート・フリスというジャズミュージシャンが、即興について次のように定義していたのです。「improvisation is the assumption of innocent in the contexts of experience. 」(即興とは、経験の文脈において未経験の憶測)。これはなぜ即興が面白いかについて表現していて、とても興味深いと感じました。文脈は記憶や経験などの保守的な要素で、未経験の憶測は子どもの心です。私は過去50年間、即興をおこなってきましたが、さらに前に進み続けていきたいと思っています。
あなたが振り付けをする際、どのぐらい即興なのですか?
どのぐらい即興なのかというよりも、どのようにして即興するのかが大切です。私は舞台で、色々なアイディアの可能性を科学的に試しているのです。例えば、C.I.では、重さや反射とかをリサーチしてきました。そして、コラボレーションやソロなど様々な形態でダンスを行ってきました。一つの体、あるスペース、ある音楽、ある夜、そこで何ができるのか、について試し続けてきましたが、全てのことは一回きりの挑戦なのです。
即興を考える際、時間という概念について考えを巡らせることがあるかもしれません。時間をどうみるのかについてはいろいろな哲学がありますが、この瞬間を生きているという事実は変わらない。もちろん過去を背負って未来を予想して生きていくのですが、その間にいまの瞬間を意識できるような訓練が必要だと思います。
ワークショップの休憩中に昼寝の時間をもうけていたのは、何か意味があるのですか?
意識というのは小さいもので、昼寝をすることで午前中に学んだことが意識下に入っていくんです。そんな無意識の意識を重要と考えています。
スティーヴ・パクストン+リサ・ネルソン ダンス プロジェクト
「スティーヴ・パクストン10日間ワークショップ」
会期:2009年4月26日(日)〜5月6日(水)
会場:東京藝術大学大学院映像研究科
住所:神奈川県横浜市中区本町4-44
https://ddjc2009.org
スティーヴ・パクストン展「背骨のためのマテリアル」
会期:2009年5月24日(日)〜8月31日(月)
時間:10:00〜19:00
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)
会場:山口情報芸術センター[YCAM] スタジオB/ホワイエ/2Fギャラリー
住所:山口県山口市中園町7-7
TEL:083-901-2222
料金:入場無料
https://www.ycam.jp
Text: Wakana Kawahito