ソナー 2008

HAPPENINGText: Takashi Kawashima

「ソナー・バイ・デイ」のキュレーションは非常に定評があり、そのため客層も非常に目の肥えたファンが多く、彼らの口コミからソナー出演後に瞬く間にメジャーになったアーティストも数多く存在する。前年ここで演奏したアーティストが次の年に「ソナー・バイ・ナイト」のヘッドライナーとして登場することもあり、アーティストの登竜門的存在として認知されている。

ソナー 2008

「ソナー・バイ・デイ」のイベント会場の一つ「ソナー・ホール」では、毎年その時代に即したテーマによる「ソナーマティカ」と呼ばれるメディア芸術の展覧会が開催される。今年は「フューチャー・パスト・シネマ」という逆説的タイトルで、映像というメディアを軸に、その未来と過去をリンクする作品が展示された。会場内には20世紀以前の映像装置である、ゾートロープや、マジックランタン、影絵人形などがその説明と共に展示された。またそれに並列し、それらの映像装置を根源としながらも、最先端の技術を用いたインタラクティブ性があるメディア芸術作品とそのパフォーマンスが展示された。

ソナー 2008

「ソナーマティカ」は、スペインの首都マドリッドにある研究施設、プラドメディアラボと技術面等で協賛をしており、そこからもいくつかの作品が出展されていた。今回の「フューチャー・パスト・シネマ」の出展作家には歴代メディア芸術祭受賞者も多く見受けられ、第9回アート部門大賞の アルバロ・カシネリによる新作「Boxed-Ego」や、同エンターテイメント部門大賞作品「Flipbook!」(フアン・カルロス・オスピナ・ゴンザレス)の作品展示や、第10回アート部門審査員推薦作品「Takashi’s Seasons」(川島高)のパフォーマンスが行われた。

ソナー 2008

中でもフランス人アーティスト、ジュリアン・メールによるパフォーマンス「Demi Pas (Half-Step)」は個人的に非常に印象に残った作品だ。投影機に自らが制作した特製のカートリッジを順次取り付け、コンピューター制御によりレンズの焦点やカートリッジにつけられた様々な仕掛け、またそれに付随した楽曲を巧みに操ることで、約20分間の短編映画をライブで作り上げていく。作品内容はフランス映画にあるような抽象的なものだが、魔法を操るように繰り広げられるパフォーマンスは子供から大人まで多くの来場者の視線を釘付けにしていた。

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