ロバート・サイデル

PEOPLEText: Yurie Hatano

ドイツを拠点に活動するロバート・サイデルは、実験的な作品を手がける映像作家。DOTMOV FESTIVALでは、2004年、2006年、2007年と、三度も作品が選出・上映されており、それぞれにゲスト審査員からの高い評価を得ている。4月22日から5月27日にかけて、マックス・ハトラーと共にジャパンツアーに挑むロバートに、彼の作品や制作について話を伺った。

ロバート・サイデル

自己紹介をお願いします。

ロバート・サイデルです。ドイツの小さな大学町、イェーナ出身で、そこでは1年間生物学を勉強しました。その後は、由緒あるバウハウス・ワイマールにてメディア・デザインの学位をとりました。ウェブサイトの名前に現れているように、アート、科学、コンピューター、自然美の間で板挟みになっている、実験的な映像作家であり、映写アーティストです。

何がきっかけで映像を撮り始めたのですか?

とても早い時期から父が僕と弟にコンピューターを教えてくれたのですが、ゲームばかりをしないよう強く言っていました。それで、デジタルベイントを始め、ちょっとしたフラクタル・アプリケーションを書いて、のちに3Dにもはまりました。そうした技術と共に、バウハウスでアニメーションを始めたのです。ただ伝統的なアニメ制作者が周りにいなかったため、自分のスタイルを発展させ、とても個人的なストーリーを表現する自由がありました。

作品のコンセプトについて教えてください。

見る人の感情レベルとつながり、特定の複雑さをもつ有機的で半抽象的なアニメーションをやっています。大概が、あらゆる見方と共に美しくなっていくもので、それは異なる層を見るからです。時と共に貴重になっていく人のように。ただ映像は今という時も必要で、誰かが思うようなフラッシュビデオやスクリーンサーバーではないのです。

僕はいろんなものに興味があり、魅了され、それらを映像の中に盛り込もうとします。まずは自然の全ての形と美しさ。次にコンピューターの可能性。特に再結合や、取り消しといったものは、僕の作品にとって大事な部分です。3つ目は、ファインアート(マルセル・デュシャンディーター・ロートなど)や、実験的な映像制作(ヤン・シュヴァンクマイエルマヤ・デレンなど)など、見る人のある感情を引き起こす、新しい空間、時間のコンセプトの発展の仕方を考えさせられるもの。最後には、見る人自体が、僕がとても驚くべき部分になってきます。どのように反応するのか、どのストーリーを受けいれるのか、などは本当に沢山のことを理解する助けになります。まだまだ学ばなければなりませんが・・。

2004年、2006年、2007年のDOTMOV選出作品についてそれぞれ教えてください。


Robert Seidel, _grau, 2004

_grau」は、抽象化された自動車事故を使った最も幅広い作品で、僕の卒業作品です。とても個人的ですが、架空でもあり、事故は最後に起こっていなかったことになります。この作品は僕の記憶の濃密な構成に基づいています。タイトルは、ドイツ語の灰色に由来し、人生の何事にも純粋な白黒や善悪など無いというのが基本のアイディアです。全ては時間や比較で違った色合いになります。この考えを伝えて、全ての彫刻的な瞬間に対する信頼性のある抽象概念を作るため、全ては、僕の人生の現実の原料に基づいています。小さなストーリーだったり、自分の頭と手の3Dスキャン、捉えられた動きや、脳のMRTデータセットなど。「_grau」の制作には9ヶ月かかり、今のところこれまでの最高です。それから4年がたって、本物の後継者をつくる時間と、特に静けさを見つけたいです。


Zero 7 feat. José González, Futures, 2006

Futures」は初めてのミュージックビデオです。「_grau」の後に、ホセ・ゴンザレスの美しい声をフィーチャーするイギリスのバンド、ゼロ7に依頼されました。時間と共に象られる将来について書かれたこの曲の特別なムードをつくりたかったので、この作品はクラッシュの連続、僕たちの願望や欲求のように明らかになっていく日用品で始まります。人生がアクシデントに溢れているように、ビデオもそうで、そこには凝縮された人工品と荒い同期があります。これらの誤差が、全てあり得る将来のぞっとする描写を組み立てるのに役立ちます。とても少ない予算でしたが、完全な創造的な自由がありました。しかしレコード会社には結局ビデオは使われませんでした。フェスティバルだけでしか公開されることなく、また同じ曲に作られた他の作品も見られました。


Robert Seidel, appearing disappearance, 2007

appearing disappearance」は、ユニバーサル・エブリシングがキュレートをするHDプロジェクト「アドバンスド・ビューティー」に依頼されたものです。これは間もなくブルーレイでリリースされ、とても詳細なテレビ解像度の可能性を利用する多くのデザイナーとアーティストをフィーチャーします。抽象的であると同時にリアルな動きの断片もある、とても短くて絵画的な作品で、ミステリアスな構造をしています。HDで全ての詳細を見て、この作品は初めて伝わります。YouTube版はあまりお進めできません。

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