「リトル・ボーイ」展
HAPPENINGText: Garry Waller
「リトル・ボーイ」は、“オタク” のアイディアを探究し、カルトの世界で名声をあげる10人の日本人アーティストのセレクションを取り上げた展覧会である。“オタク” の意味は、アニメやマンガ世代を取り巻く日本のビジュアルカルチャーから来ていて、大まかに “ポップ・カルト・ファナティシズム(ポップカルト狂)” と訳される。
この展覧会が私の目に止まったのは、日本のアートや “オタク” について何も知らないに等しいからであり、何を隠そう私が時折のアニメフリークであるからだ。グラフィック・デザイナーとして、日本から出されたデザインブックをよく手に取り、奇妙でカラフルなデザインにざっと目を通すのだが、そのどれにも言語の問題から専念することができないでいた。
Takashi Murakami, Eco Eco Rangers Earth Force, 2005
展覧会では、面白い手法や異なったスタイルの様々な作品が並べられた。全て日本のポップカルチャーの中心や、日本の子供達を取り巻くステレオタイプのアイディアがもとにされている。その中で目に付いたいくつかの作品がある。
Yuji Sakai, Godzilla figures, various scales and dates.
酒井ゆうじの「ゴジラ模型」。1954年から1995年の日本で最も有名なモンスターの進化、また、鮮やかな赤の巨大な解剖図解を展示。
Shigeru Komatsuzaki, Battle in the South Pacific: American Battleship “South Dakota,” 1968. Collection Masako Komatsuzaki and Keisuke Nemoto
小松崎茂の戦争の描写。精巧で丹精こらしたアクリルの表現。(ものすごい時間がかかったに違い無い!)
Kitahara collection, Japanese vintage toys, various makers, 1960s -1970s. Collection of Teruhisa Kitahara
北原コレクションから年代物のおもちゃ。その多くが日本で大きく成長した企業のマスコット。(すごくクールでレトロ!)
Noboru Tsubaki, Fresh Gasoline, 1988-89. Collection Jeffrey Deitch
椿昇の大きくて鮮やかな黄色の塊。日本のアメリカに対する混乱した気持ちが叙述されていた。
他には、植物と共に複雑に発展し過ぎた都市の景観を描写した、ビニールのデジタルプリントや、広島のキノコ雲を反映した展示会のキュレーター、村上隆による作品も。
作品に添えられた説明書きに、アーティストの洞察力に溢れたバックグラウンドとインスピレーションを感じさせられた。キュートで奇妙で異様な作品の裏側を見ることができ、それらがどこからきたのかを感じ取ることができた気がする。
この展覧会の名前である「リトル・ボーイ」の由来は、広島に落とされた原子爆弾のニックネームからきている。展覧会のキュレーターが、主張することを恐れていないことは「Article 9」(日本国憲法第9条)のコピーが展示されていることから推測できる。入口で最初に目にするものの一つには、第二次世界大戦で日本に「リトル・ボーイ」を落とした後、日本に対する軍事圧力を保つ為にアメリカが書いたドキュメントがある。
これで明らかなように、戦争や爆弾や続いて起る黙示は、この展覧会の多くの作品を通したはっきりとした証拠である。村上隆は、広島以来のジェネレーショナル・アフターショックを食い止めるアートの形を追究して来たことで知られる。オタクは、アニメやマンガを取り囲むビジュアルの言語であり、黙示のイメージ、戦争のメカニズム、都市の景観、モンスター、大きな目の罪無き子供達(怒ることを知らない頃の!)そして大きな黄色の塊、と同じ意味を持つのだ!
この日本からの折衷的な作品を見ることで、何かを学べた気持ちになり、誰にでもここに行ってみて欲しいと思う。
Little Boy: The Arts of Japan’s Exploding Subculture
キュレーション:村上隆
会期:2005年4月8日(金)〜7月24日(日)
会場:Japan Society Gallery
住所:333 East 47th Street New York, NY 10017
TEL:+1 212 832 1155
https://www.japansociety.org
Text: Garry Waller
Translation: Yurie Hatano
Photos: Garry Waller