ドクメンタ 12
HAPPENINGText: Yoshito Maeoka
ヴィルヘルムヘーフェ城美術館は、4会場から路面電車で30分ぐらい離れた全く別の場所に位置する。ここは18世紀頃の城跡で現在は美術館として使用されている。
Yan Lei
この会場は今回のコンセプトをもっとも体現した展示だったように思う。というのも、本来19世紀以前の絵画作品を展示しているこの会場で、ドキュメンタの作品として新旧の作品が時代やコンテクストを超えて並列して展示されている為だ。写真は、ヤン・リーの作品。
Sonia Abián Rose, The concentration camp of love, 2007
また、ソニア・アビアンローズの作品も一見すると、周囲の宗教画と相まって、この美術館本来所蔵されていた作品かと思うような見た目であった。
Sonia Abián Rose, The concentration camp of love, 2007
天使の羽ばたく一見ロココ調のような絵画をアンティークの引き出しの表面としかわいらしい外観となっているが、内容に目を向けるとナチスの強制収容所の入り口に冠される有名な言葉「ARBEIT MACHT FREI(労働が自由を生み出す)」の隣に飾り窓が見られる等、ブラックユーモアの漂う作品だった。
Kerry James Marshall, The Lost Boys, 1993
近代性及び原始性を象徴するようなケリー=ジェームス・マーシャルの絵画作品や、宗教的な偶像を想起させるゾフィカ・クリクの写真作品等が18世紀の絵画等に混じって陳列されていた。
また、今回のコンセプトを体現していると感じたもうひとつの理由として、ドクメンタの展示品として19世紀以前の“絵画”が展示されていたことが挙げられる。例えば北斎の版画、コーラン、ヒンドゥ教の絵画、スーフィにまつわる寓話をモチーフとした版画、刺繍、ドローイングなどが、アフリカ、南米のアーティストによる映像作品に挟まれた特異な場所で保護ライトに照らされながら陳列されていた。
以上、内容をかなりかいつまんで追いかけてみたが、詳細をテクストなどで追体験すればする程、この展覧会の向こう側に横たわっている目論みや企てがさらに読み取れ近づけた様に思う。またその様に構築的な試みを実現していた展覧会だったとも思う。今後5年先のトレンドを位置づける展覧会として評判の高いドクメンタではあるが、ここでの体験を元に世界のアートシーンに起こりうる事を考えて行くのも一興かもしれない。
Documenta 12
会期:2007年6月16日(土)〜9月23日(日)
会場:ドイツ、カッセル
https://www.documenta12.de
Text: Yoshito Maeoka
Photos: Yoshito Maeoka