ミフレル「お婆ちゃんの恋」

HAPPENINGText: Yuhei Kikuchi

ミフレル。何だか不思議な響きである。

去る3月21日から25日にかけて、ミフレルの日本初となる展示会「GRANDMA’S LOVE(お婆ちゃんの恋)」が東京で行われた。英国のロンドン芸術大学セントラル・セントマーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで出会った二人、日本出身、グラフィックデザインを学んだトモアキ・リュウと台湾出身、テキスタイルデザインを学んだウェイウェイが昨年立ち上げたブランドである。

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会場はビル四階の一部屋で、窓からは日光がよく射し、温かい雰囲気。ズラりと並んだ服と小物を見せてもらった後、お茶と手作りのお菓子を出してもらい、終始和やかな雰囲気の中、二人からお話を伺った。

まず、僕が誤解していたことを二つ正さなければならない。一つ目は展示会名に関してである。最初、展示会名は「GRANDMA’S LOVE」と聞いていて、その意味するところは孫に向けての愛情だとかそういったことを想像していたのだが、違った。

『それはもう本当に僕(リュウ)のお婆ちゃんが、80過ぎなんですけど、恋に落ちまして、その話を聞いてて、え、80歳でそういう気持ち、そういう感情って出てくるんだって思って。そういう気持ちって、そういう気持ちが出てくることって、僕らにとってすごい驚きだったんです。そういうものを元にコレクションを始めたいなあと。』

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二つ目の誤解は展示会の内容に関してである。Tシャツや、ちょっとした小物が並んでいるのかと思っていたのだが、いざ見てみると本格的な服が整然と並べられていた。繊細であり、かつ穏やかな色使いで、ぬくもり、温かみが漂ってくる。縫製もしっかりしたものだった。なお、一番上の写真の左下の文は、「色取鳥が飛んでいる。」、「虹色に光る森」といったように一つ一つが断片的な詩のようなものであり、それぞれが本展示会のものに対応しているという。それは来場者に、いろいろと想像してもらうための仕掛けである。そういった、ファッションの展示会では普通見られないようなコミュニケーションの取り方も試みていきたいとのこと。

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ミフレルの二人はファッション科出身ではない。ブランドの立ち上げを思い立ってからは、一から十まで全部手探りで、ずいぶんと時間がかかってしまったという。
『洋服の知識から工場の生産とか、洋服自体の構造を理解するのに二年かかりました。ちょっとグラフィックデザイナーがノリでやってるんだろ、みたいには思われたくなかったから、本当にもうちゃんと。』

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作品におけるインスピレーションの源泉はそれぞれで異なる。ウェイウェイは『古いもの、アンティーク、お婆ちゃんのものだったり、それらに込められた想い』であり、リュウは『全部ですね。生活から友達から、映画だったり音楽だったり、自分の生活にかかわるもの全て影響してるんじゃないですかね。』とのこと。

そしてリュウは決定的な影響を受けた人は親だという。また、パートナーとして良い意味でも悪い意味でも影響し合っているそうだ。出会ってから、今でもお互いがお互いのことを変な人、おかしい人だと思っていると、顔を見合わせ笑いながら言っていた。今まで学んできた分野が違う二人で、視点はかなり異なるようである。しかし意見が食い違うことはほとんどなく、それが良い方向に働き、影響し合い、二人をさらなる高みに昇らせているという。

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二人が作っていきたいものは消費されないもの、大事にされるもの、変わらないもの、伝えていけるもの。今後のミフレルの展開としては、もっと世界に出て、自分たちが学んできたものがどこまで通用するのか試してみたい、と語っていた。

最後に二人からシフト読者へのメッセージを預かってきたので、以下に。

ウェイウェイ『慌しい生活をするんじゃなくて、もっとゆっくりとして、よく感じるようにすれば、もっと人と人の関係が近くなるんじゃないかと思います。』

トモアキ・リュウ『後悔しない人生を、送ったらいいんじゃないですかね。自分の、やりたいと思った事には挑戦してみる。挑戦する気持ちを忘れないで下さい。』

ミフレル「GRANDMA’S LOVE(お婆ちゃんの恋)」
会期:2007年3月21日(水)〜25日(日)
会場:Aoyama 401
住所:東京都渋谷区渋谷2-5-9 パル青山ビル4F
https://www.mifrel.co.jp

Text: Yuhei Kikuchi
Photos: Yuhei Kikuchi

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