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ジェフ・ウォール展「レンズ越しの現代生活」

HAPPENINGText: Christina Merl

この「序文」という作品では、ラルフ・エリソンの古典小説「見えない人間」の中で登場する有名なシーンを表現している。エリソンの語部が住む “暖かくて光に満ちた” 地下室がウォールの作品では描写されており、1,369個の電球が使われている。電気会社から盗まれた電力と光は、物語のキャラクターの住居だけでなく、彼の存在の真実も照らしている。


Invisible Man by Ralph Ellison the “Preface”, 1999-2001, 193.7×269.9 cm, Marian Goodman Gallery, NY © Jeff Wall

『光は僕自身の現実を確固たるものにしてくれる。そして、僕のに命を与えてくれるものなんだ…。光がなければ、僕は見えないだけではなく、存在自体もなくなってしまう。自分の存在に気付かれないということは、生き地獄の中にいるようなもの…。真実なのは光、そして光こそ真実なんだ。』と、ウォールは語る。


A Sudden Gust of Wind (after Hokusai), 1993, 250×397 cm, Tate Gallery © Jeff Wall

この作品は、葛飾北斎の「富士三十六景」に触発され制作した作品。ウォール自身の現代的な風景の中では、富士山を高層ビルに、強風にあおられる百姓を建築業者や測量士に置き換えている。自然を人間の力ではどうすることもできない力として示し、人が抱く野心的な計画をコメディータッチで表現している。風によって、書類が紅葉と共に舞い、人物はバロック調の彫刻のようなポーズを生み出している。中央に見える川は、古典的な田園風景を彷佛とさせ、寒々とした感触が織り混ざっている。この作品自体は、ある一瞬を捉えたように見えるが、実際には、俳優を起用し5ヶ月間に渡って撮影された複数の写真をデジタル合成させたものだ。

Modern Life Through the Lens of Jeff Wall
会期:2003年3月22日〜5月25日
時間:10:00〜18:00
会場:Museum of Modern Art Ludwig Foundation, Vienna
住所:1 Museumsplatz, 1070 Wien
TEL:+43 (0)1 525 000
info@mumok.at
http://www.mumok.at

Text: Christina Merl
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Courtesy of Museum of Modern Art Ludwig Foundation, Vienna © Jeff Wall

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