ソナーサウンド・トーキョー 2002
HAPPENINGText: Jo Kazuhiro
10月12日と13日の2日間に渡り、「Roppongi Hills Information Center/THINK ZONE」を会場として開催された「ソナーサウンド・トーキョー 2002」。スペイン・バルセロナにて毎年開催されているアドヴァンスド・ ミュージックとマルティメディア・アートの国際フェスティバル「ソナー」の衛星プログラム、そして同時期に開催中の「東京デザイナーズブロック2002」の関連プログラム、という2つの側面を持つ今回のイベント。国内外で活躍中のミュージシャンによるライブパフォーマンスに加え、第一線で活躍中の批評家、アーティスト等によるシンポジウムとレクチャーによって、現在のエレクトロニック・ミュージックの一端を知ることができた。
今回のレポートは初日に行われた「ソナーサウンズ・シンポジウム」と、2日目に行われた「ソナーサウンズ・レクチャー」を中心にお届けする。
「ソナーサウンズ・シンポジウム」は、野々村文宏、ジョエル・ライアン、佐々木敦、久保田晃弘、四方幸子の5人によって、「デジタル・テクノロジーと音楽・映像・アート、そしてデザイン-その現状と今後の行方、さらなる未来のヴィジョン」をテーマとして行われた。このシンポジウムは司会の野々村文宏によるテーマと参加者の紹介のあと、各参加者がそれぞれスピーチを行い、それに対して討論するといった形式で行われた。
まずはじめに登場したのは久保田晃弘。大学で教えつつ作品の制作/演奏を通じて、表現素材としてのコンピュータの可能性を探究している彼のスピーチは、コンピュータ上での数による表現を考える事こそがデジタルデザインの出発点とも言えるのではないか、存在しているもののデジタル化ではなく数をどのように表現するのかが重要、その場合のインタフェースと感覚との関係、表現とアルゴリズムとの関係とその分散的な使用、そしてそれらによって実際なにが可能になるのか、といった話題からなり、まず数-デジタルが存在している、というところから表現を考えるという視点が興味深く感じられた。
続いて四方幸子。メディアアート関連のキュレーターとしてまた批評家として多方面での活躍で知られる彼女は、実際に彼女が関わってきたプ ロジェクトである「kingdom of piracy」の紹介を通じて、カルチャーとデジタルとの関係について語っていた。 「kingdom of piracy」は、13組のアーティストの参加による共有文化と知的所有権との関係に対してのプロジェクトであり、本来であれば今年5月に完成予定であったのだが、政府による圧力などの影響で、現在もサーバが移動しつづけている流浪のプロジェクトとなっている。その中には「RSG」によるコモドール64のゲームのクラッキングタグのコレクションや、エキソニモによるグヌーテラのネットワークを利用したMP3のカットアップ、といった興味深い作品が含まれており、犯罪といたずらとの境界線、そこでのアートとは、といった重要な問題が示されていた。また彼女の話の中でも特に、初期のネットアート作品がコードの破壊に重きをおいていたのに対し、現在は、オープンソース、ワークスペースとしての作品にシフトしている、という指摘が印象的だった。
3番目のジョエル・ライアンのスピーチは、「HEADZ」のバルーチャ・ハシムの通訳を通じて行われた。コンピュータを用いた即興演奏、ライブパフォーマンスを追求する音楽家であり、STEIMの研究者でもある彼は、電子音楽におけるパフォーマンスとインタフェイスの重要性、80年代初頭にPCを音楽に使い出した、プログラミングとデザイン、即興性とコンピュータとの関係、新たな楽器の開発、エヴァンパーカーとの共演といった話題を実例を数多く交えながら話していた。研究機関での電子音楽がスタジオワークに偏っているのが嫌で、リアルタイムに関心がある、という演奏を重視したその姿勢に好感が持てた。
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