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レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才

HAPPENINGText: Alma Reyes

古典主義のラファエロから、近代のヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、アメデオ・モディリアーニ、20世紀のキース・ヘリングに至るまで、驚異的な芸術作品を遺した夭折のアーティストたちの系譜。そこにその名が刻まれている恐るべきオーストリア人画家エゴン・シーレは28歳で早逝した。進歩主義時代における経済的、政治的、宗教的な弾圧、さらに第一次世界大戦とスペイン風邪の惨禍によって打ち砕かれた同時代のアーティストたちと同様、孤独と苦悩に苛まれ、暴力と反乱の渦に引きずり込まれたことでよく知られている。だが、その挑発的な絵画には、鮮烈な色彩、素早い筆致、深みのある表情など、心を捉えて離さない激しさが散りばめられて強烈な磁力となっており、シーレの作品は長年称賛されてきた。


アントン・ヨーゼフ・トルチカ《エゴン・シーレの肖像写真》(1914年)レオポルド美術館に寄託(個人蔵)

本年4月9日まで、東京都美術館で「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」が開催されている。国内において30年ぶりとなる本大規模回顧展では、エゴン・シーレ作品の世界最大級のコレクションで知られるウィーンのレオポルト美術館所蔵の油彩画や素描50点が展示されており、19世紀末から20世紀にかけてのオーストリアの主要な芸術作品を8,300点以上所蔵する当美術館が誇る、グスタフ・クリムト、オスカー・ココシュカ、リヒャルト・ゲルストルの傑作も展示されている。


グスタフ・クリムト《シェーンブルン庭園風景》(1916年)油彩/カンヴァス、レオポルド美術館に寄託(個人蔵)

本展の最初の章では、故郷のトゥルン(オーストリア南部)とウィーンにおける若年期の足跡を辿る。少年時代、シーレはやや風変りな恥ずかしがりやで無口な子どもだと思われていた。駅長であった父は、息子の成績の悪さに不満を抱いていたが、絵画の才能の片鱗に気づいてもいた。16歳の時、シーレは多くの著名な卒業生を輩出した権威ある芸術機関であるウィーン美術アカデミーに入学したが、シーレの作品に強く惹かれたクリムトが彼のドローイングを買い取り、モデルを手配し、名高いウィーン工房などといった考えられる限りのパトロンにシーレを紹介した。シーレがクリムトやココシュカの影響を強く受けたことは言うまでもない。初期こそ彼らのスタイルを踏襲していたが、次第に表現性豊かに捻じ曲げられた線、爆発力のあるフォルム、鮮烈な色彩、そして人間の姿とセクシュアリティをありのままに直視する確固たるまなざしといった独自のアプローチを次第に確立した。

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