ホール・アース・カタログから50年、これからの未来・テクノロジーを考える〜 ニュー・コンテクスト・カンファレンス 2021

HAPPENINGText: Taketo Oguchi

では、日本の状況はというと、今年9月1日からデジタル庁が設立されるという。「デジタル社会・オープンガバメントの目指すもの」と題したセッションで登壇した河野太郎(行政改革・規制改革担当大臣)の講演では、テクノロジーを最大限に活用し、AI(人工知能)ができることはAIに任せ、行政のDX化によって人は人にしかできないことをし、「人に寄り添って、ぬくもりのある社会」の実現を目指すと語った。マイナンバーカードの導入をめぐっては、監視社会、プライバシーなどの問題があると批判もあったが、現在のコロナ禍での国民への給付金や事業支援金の支給やワクチン接種などを巡っては、デジタル化されていればもっと早く全国民に支給されていたことであろう。メリット、デメリットあるのは承知だが、周知を行い、国民の理解を得たいと話した。


河野太郎(行政改革・規制改革担当大臣) 写真提供:デジタルガレージ

次に登壇した平井卓也(デジタル改革担当大臣)は、日本のデジタル政策は諸外国に比べ遅れており、日本は経済規模では世界第3位をキープしているが、デジタル競争力では27位という。政府情報システムの関係予算に年間8000億円を支出しているものの、その大部分が既存システムの維持管理に使われており、イノベーションは一向に進んでいないのが現状だ。デジタル庁では、500人の職員のうち300人程度は官僚、200人程度を民間から採用するという。官民の協業をいかにスムーズに行えるかが成功の鍵になるだろう。また、1980年頃に、当時は実現しなかった大平元総理大臣の「田園都市国家構想」は、テクノロジーの活用によって分散・多様化が進めやすい現在、スマートシティのモデルにもなり得ると話した。


平井卓也(デジタル改革担当大臣) 写真提供:デジタルガレージ

伊藤穰一をモデレータに、河野大臣、平井大臣に加え、村井純(慶應義塾大学教授)、ジェニファー・パルカ(元ホワイトハウス科学技術政策室米国副最高技術責任者)が参加したパネルディスカッションでは、平井大臣が現状での民間人の採用での問題点として、一般的に能力の高い専門家の収入を国が補償できないといった制度的及びコンプライアンスの問題あるといったことに対して、ジェニファーはアメリカでも制度上はそう変わらないが、それでも協力してくれる気持ちのある優秀な人材を採用しているという。アメリカでは収入が減ったとしても国や社会をよくするために貢献したいという奉仕の精神があるという。ボランティアやプロボノといった社会奉仕が日常化している国ならではだ。

また、省庁の横の連携は不可欠で、省庁の各部署のトップ直属にデジタル担当者を置く(ジェニファーは「Special Adviser for Delivery」と呼んでいた)ことで、スピード化されるとジェニファーは話す。「経済」「立法」と横並びで「テクノロジー」を語らなければならない時代になっているという。オープンソースの積極的な活用、ガバメントクラウドの構築、オープンガバメント(開かれた政府)の実現など、ESG(環境・社会・ガバナンス)時代での大きな改革の流れが始まる。いずれにせよ、個の力や意識改革が求められていることには変わりない。

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