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ホール・アース・カタログから50年、これからの未来・テクノロジーを考える〜 ニュー・コンテクスト・カンファレンス 2021

HAPPENINGText: Taketo Oguchi

「アースショット:ホール・アース・カタログから50年、これからの未来・テクノロジーを考える」をテーマに、ニュー・コンテクスト・カンファレンス 2021が、8月11日にデジタルガレージで開催された。本イベントは、最先端のインターネット技術やその周辺で生まれるカルチャーやビジネスを紹介することを目的に2005年から始動、今回はその第21回目にあたり、サンフランシスコの会場を繋ぎネットを通じて配信も行った。


Whole Earth Catalog, Fall 1968

ホール・アース・カタログ(全地球カタログ)とは、「ツールへのアクセス」をテーマに地球上のあらゆるモノ、サービスを網羅することを目的に、1968年にスチュワート・ブランドによって創刊されたインターネット革命の哲学的基礎になった伝説の雑誌。その精神はシリコンバレーに受け継がれ、今日のインターネット(IT)革命へとつながり、世界で大きな影響を与えてきた。

カンファレンスではまず初めに基調演説として、伊藤穰一(デジタルガレージ共同創業者)のモデレートで、スチュワートの話を直接聞くことができたのは貴重な体験となった。スチュワートは、「ムーンショット」*の記録を一般公開するように運動を行ったことでも知られているが、月の写真の前に最初に宇宙から届いた最初の写真は地球の写真「アースショット」であり、人類が初めて宇宙から地球を見ることに繋がった。これは一般の人々が情報にアクセスできることの重要性を示す一つの大きな出来事であった。

*ムーンショット:1961年にアメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディは、「アポロ計画」の発表スピーチの中で、人類を月へ運ぶ「ムーンショット」宣言を行った。本カンファレンスでは「アースショット」宣言し、宇宙から俯瞰で地球へと目を向けるESG(環境・社会・ガバナンス)時代の人類のあり方を全体を通してのテーマとしている。


スチュワート・ブランド 写真提供:デジタルガレージ

スチュワートは、ホール・アース・カタログの中で、情報へのアクセス、ツールを提供することの重要性を、バックミンスター・フラーの思想からアイディアを得たと述べた。ヒッピームーブメントとも呼応する形で出版された本書の目的は、「世界をより良くする」ためである。スティーブ・ジョブスの有名なスタンフォード大学の卒業式の式辞の中でもホール・アース・カタログからの言葉が引用されていることからも、ホール・アース・カタログが彼に影響を与えたことは明らかで、アップルで彼が世に送り出してきた数々の製品 ー ツール、テクノロジーとデザインを融合させたパーソナルコンピューターやスマートデバイス ー は世界を大きく変えた。

では、宇宙から地球を俯瞰で見た時に、現在地球はどのようなことになっているかと考えると、環境変化・気候変動・文明の問題、そしてパンデミック、ガバナンス、コモンズなど様々な問題がある。スチュワートは、これらの問題に対して考えるべきことは「ロング・ナウ」すなわち目先ではなく長期的な視点が必要である、現在はDX(デジタルトランスフォーメーション)の時代へと大きく社会が動いているが、長い歴史で考えれば、テクノロジーの進化の過程に過ぎないと。スチュワートは、この考えは、神社(神道)にインスピレーションを受けたと述べた。神社では、20年に一度、神事として社殿の刷新(遷宮)を行っている。技術伝承の寿命が20年であるという説もあり、刷新による連続性は伝承を保つ手段でもあり、常に時代の変化に対応しながら進化を遂げているのである。

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