ホール・アース・カタログから50年、これからの未来・テクノロジーを考える〜 ニュー・コンテクスト・カンファレンス 2021

HAPPENINGText: Taketo Oguchi

次に行われたセッションでは「ホール・アース・カタログとアート&カルチャー」をテーマに、ジェーン・メトカーフ(ワイアード共同創業者)とニック・フィリップ(アーティスト)がサンフランスシコから中継をつないで登壇、武邑光裕武邑塾)をモデレーターとした鼎談が行われた。ここでは三方から多くの興味深い話を聞くことができた。


パネルディスカッション「ホール・アース・カタログとアート&カルチャー」 写真提供:デジタルガレージ

ヒッピームーブメント、サイバーパンクから、コミュニティとテクノロジー、レイブパーティ、サイバーリバタリアンなどのワードとともに、70年〜90年代の文化の中に多様性(ダイバーシティ)があったことを武邑氏が指摘。

アーティストとしてサイケデリック革命の父として知られるティモシー・リアリーとのコラボレーションや、レイブカルチャーを体現したストリートブランド「アナーキック・アジャストメント」の立ち上げなど、当時ビジュアル面で多大な貢献を果たしたニックは、テクノロジーやソフトウェアをどう使うかは人それぞれで、作品は楽しんだ結果生まれたものだという。また現在は、NFT(非代替性トークン)などのテクノロジー技術の進化により、デジタル作品の売買・流通も積極的に行われるようになってきており、今までのアート市場ではあり得なかった、作品の二次流通でも作家が利益を上げることができるようになってきていることはデジタルネイティブ世代にとって良い事だとも話した。

ツールの普及、ソフトウェアの多様化、テクノロジーの進化、コミュニティーの広がりによる現代のブロックチェーンやリモートワーク、メタバース、クリプト、ウェブ3.0、レガシーシステムから個人へという流れは、サイバーリバタリアンの復活にも見える。一方、誰でもメディアを作れる情報発信者になれる時代において、モノポリー、ゲートキーパーと呼ばれる存在や、プライバシー、データ・スキャンダル、ドロップアウトなどテックラッシュと呼ばれるテクノロジーに批判的なネガティブな傾向もある、とジェーンは語る。

また、アメリカで人種差別への抗議活動が広がるきっかけになった、黒人のジョージ・フロイドの死から1年たった今も「ブラックパワー」運動は広がりを続けており、より良い世界の実現への、個の力と、声を上げることの有効性を説いて鼎談は締めくくられた。

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