パフォーミング・アーツ・フェスティバル・ベルリン 2019

HAPPENINGText: Ari Matsuoka

このフェスティバルの主な項目としては名の通り「パフォーミング・アーツ」なので、各施設によって実験的な催しがされていたり、実際に観客側が体で触れて体感できるものまで幅広く、毎日朝から夜まで開催されている。その中でも、私は最終日のコンテンポラリーダンスの項目に注目した。

演目「E T H E R E A L」は、ギリシャ出身のエマヌエラ・ドリアニティと日本出身の藤波佑也の男女二名のアーティストにより共同制作されたもの。エマヌエラは学生時代に哲学、教育、心理学を学びながらアテネの国立ダンススクールに通っており、歌詞、ライブミュージック、映画を扱うアンサンブルを得意とする女性ダンサー。藤波は日本で生まれ、ダンスと体操を学び、振付家・ジョン・ノイマイヤーが創立するドイツのバレエ学校を卒業後、国内外問わず数多くの振付師のもとでパフォーマンスをしている。


© Menelaos Liontos

映画「ピナ・バウシュ」や、最近だと「サスペリア(リメイク版)」で鬼気迫るコンテンポラリーダンスを観たことはあったが、これまで間近で観たことがなかったため、初めての体験に正直かなり緊張していた。私が印象的だったのは、ある夜の眠りにつく前のほんのりと感じる不安や恐怖の感情を表現しているかのような場面から、人間の形をした獣が、突然イギリスの男女ユニット、ユーリズミックスの「スウィート・ドリームス」を歌い出すシーンへ。

《色んな場所に行ったけれど、何処へ行っても皆足りないものを求め彷徨っている》 その歌詞の通り、場面はどんどん、現実世界からディープな夢の中へ引き込まれているようだった。収容人数100人程の空間のなかで、舞台のインラインぎりぎりまでいっぱいになった観客と二人の距離はリアルな息遣いが分かるほど。私は運良く中央真ん中の最前列に座ることができたのだが、ダンサー二人の空気を斬るような躍動感を感じ、こちらの心拍まであがった。

終始緊迫感のある演目だったというわけではなく、所々に彼らなりの「ユーモア」を含んだ喜劇的な場面もあり、観客は笑ったり自由に感情を表現してもよかった。何より、パフォーマンスに色を加える音楽がドラマトゥルギーな空間を作り出す。本当にこれは持ち帰ることはできない、その場にいた観客とパフォーマーだけが体感することのできる唯一無二の経験だった。コンテンポラリーダンスを初めて観て、以前よりももっと人間の所作に目がいくようになったかもしれない。

舞台芸術に関してうまく語れない部分が多いが、PAFを通じて、実験的、革新的、国際的なアーティストの発信源となっている劇場がここベルリンには多数存在していて、ベルリンからインディペンデントに活動が広がっていることには間違いがないと感じた。
ベルリンから世界へ発信するパフォーミングアートをこれからも追い続けたい。

Performing Arts Festival Berlin 2019
会期:2019年5月28日〜6月2日
会場:ベルリン市内各所
https://performingarts-festival.de

Text: Ari Matsuoka
Photos: Ari Matsuoka

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