ストックホルム国際映画祭 2019

HAPPENINGText: Victor Moreno

第30回ストックホルム国際映画祭では、女性の存在感が再び映画業界の平等を推し進める映画祭での取り組みを示しながら、変化を生み出し続けている。フランスの女性映画監督、セリーヌ・シアマはストックホルムビジョナリー賞を受賞し、アメリカの最高の女優の一人であるロザンナ・アークエットは、#metoo運動と活動家精神が称えられ、ストックホルム功労賞を受賞した。また、ロシアの若き映画監督カンテミール・バラゴフは、長編第二作の 「ビーンポール」(2019)でインパクト賞を受賞した。その賞金は10万ドル。この作品は、第二次世界大戦で荒廃したレニングラードに住む女性の視点から大戦のその後の物語が展開しているストーリーだ。


Photo: Carla Orrego Veliz

セネガル系フランス人の映画監督マティ・ディオプは、今年のカンヌ映画祭のコンペティション部門に参加する史上初の黒人女性であり、彼女の最初の長編映画「アトランティックス」(2019)がグランプリを受賞した。チリの映画監督パブロ・ララインの「エマ」(2019)は、子供の養子縁組に失敗した若いカップルの物語。新進気鋭の女優マリアーナ・ディ・ジローラモが、現代のチリの政治、社会的な立場とは相容れない新しい世代を代表する少女を描いており、この作品は映画祭でも上映された。アメリカ映画監督のノア・バームバックによる「マリッジ・ストーリー」(2019)もこの映画祭で初演された。映画監督のメリナ・レオンによる「ソング・ウィザウト・ア・ネイム」(2019)は、名誉あるブロンズホースの最優秀撮影賞を受賞。マーク・ジェンキンは「ベイト」(2019)という作品で最優秀監督賞を受賞した。

今年会場で初演された60を超える様々な国の約150作品の中から、私たちが鑑賞したおすすめ作品を紹介する。


Monos (2019) by Alejandro Landes

コロンビアの映画監督アレハンドロ・ランデスによる「モノス」(2019)は、グループの一部として名もなきコロンビアの土地で、人質として拘束された捕虜の見張りを任された少年兵たちを描いた衝撃的な作品だ。サンダンスフェスティバルで初演され、審査員特別賞を受賞した。美しく撮影されたこの映画は、第92回アカデミー国際長編映画賞のコロンビアからのエントリー作品として選ばれた。ミカ・レヴィの息をのむような音楽は、私たちの既成概念の枠を超え、映画を超越した作品へと仕上げている。


Beanpole (2019) by Kantemir Balagov

若い映画監督がこんなにうまく映画制作を進めていくのは普通では考えられない。「ビーンポール」はさらに、第二次世界大戦後の厳しさと、映画監督としてのバラゴフの詩的で美しい感性とのコントラストを強調している。彼は故郷のカバルダ・バルカル大学で学び、その指導者であるアレクサンドル・ソクーロフは、現代のソビエト映画製作における最も重要な映画監督の一人だ。彼は、ソビエトの戦後について語りたいとは思っていなかったが、女性の犠牲という観点からのアプローチを見つけたことで作品に仕上げた。この映画は、2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチによって書かれた「アンウーマンリー・フェイス・オブ・ウォー(戦争は女の顔をしていない)」という本に触発されている。

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