アートとは、社会とつながり、意識や夢、欲望を反映し、現代のライフスタイルや私たちが振り返る時代を映し出す概念の一つと言える。空きビルを最近クリエイティブスタジオに生まれ変わらせた180ストランドで開催されている展覧会「インフィニット・ミックス」にはこういった全ての内容が揃っている。

Work No. 1701 (2013), Martin Creed, London
Courtesy the artist, Hauser & Wirth and Gavin Brown’s Enterprise, New York

ニューヨークの道路を横断している歩行者に焦点を当てた映像作品がある。アーティスト、マーティン・クリードは、この作品は現代の生活からインスピレーションを得たと説明している。作品では、陽気でポップな曲に乗せ、変わった歩き方をするハンディキャップを持つ人と老人を楽観的に捉える。彼らの人生はまるでダンスをしているかのよう。

THANX 4 NOTHING (2015), Ugo Rondinone, New York. Photo: Coco Liu

４つの巨大スクリーンと８台のテレビを備えた真っ暗な空間の中で、観客は70歳のジョン・ジョルノの演説を聴く。彼は誰もいないパレ・ド・グラス劇場のステージに一人立ち、全ての人に感謝する。彼の周りで彼を落ち込ませた人、裏切った人、そして友人や愛する人の死、スピーチは少しのユーモアと共に落ち着いた調子で進み、観客のいない講堂のシーンとそれを上映している観客でいっぱいの展示室の鋭い対比が際立つ。ウーゴ・ロンディノーネの没入型インスタレーションは観客に、彼が年を取るたびに、友人や恋人との別れを重ねていくことの悲しみ、つまり自身の感情を体験させる。絶望が暗い考えを引き起こすのか、悲しみの記憶が絶望を引き起こすのか？ジョルノは70歳の誕生日にこの詩を書き、自分史を人々に伝える。

Massage The History (2007-9), Cameron Jamie, Paris
Courtesy the artist and Gladstone Gallery, New York and Brussels

「マッサージ・ザ・ヒストリー」（2007-2009）は、観客に隠れた世界へ足を踏み入れさせる。これは黒人の男たちが家具に向かってセクシーな動きをし、それが刺激的なダンスとなっていく映像作品。奇妙に見えるかもしれないが、それが男性たちが家具と関係を持つようだったからなのか、それとも女性の代わりに力強い男性たちがカメラの対象になったからだろうか？この映像は、アメリカの郊外で見つかった２つのホームビデオを組み合わせたもので、元のヒップホップ音楽をソニックユースのインディーポップミュージック「マッサージ・ザ・ヒストリー」に置き換えている。このコラージュ・ミュージック・ビデオは、いつでも新しい発見を伴って、新たな組み合わせで構成できる。