「ロン・ミュエク」展

HAPPENINGText: Alma Reyes

ミニチュアから実物大、さらには巨大なものまで、観る者を挑発し、曖昧な感情へと誘う作品で圧倒するダイナミックな彫刻家、ロン・ミュエク。彼は今なお、世界で最も人々の好奇心をかき立てる現代アーティストのひとりである。彼が創り出す、現実と見紛うばかりの彫刻は、孤独、脆さ、不安、寛容、そして戸惑いといった、人間が抱える複雑に絡み合った感情の海、ひいては人間性の本質を深く見つめ直させる。

森美術館で、9月23日まで開催中の展覧会「ロン・ミュエク」は、日本国内では18年ぶりとなる、本作家の待望の大規模個展である。カルティエ現代美術財団との共同企画である本展は、2023年のパリを皮切りに、ミラノ、ソウルを巡回し、現在の東京開催へと至った。会場には、1990年代半ばから現在に至るまでのミュエクの革新的なキャリアを総括する、11点の圧倒的な作品が集結している。

人形やパペットを制作していた母親のもとで育ったミュエクが、早い時期から模型制作に惹かれたのは、極めて自然なことであった。彼は1970年代後半から1980年代初頭にかけて、オーストラリアの子供向けテレビ番組のクリエイティブ・ディレクターとしてキャリアをスタートさせる。その後アメリカへ渡り、高名なジム・ヘンソン(※セサミストリートなどの生みの親)のもとでパペット使いや模型制作者として数々の映画やテレビ番組に携わり、シリコンやファイバーグラスを用いた彫刻技術に磨きをかけた。

ミュエクが世間の注目を徐々に集めるようになった決定的な契機は、1997年にロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展への参加であった。同展で発表された、自身の亡き父親を驚くべき写実性で表現した《デッド・ダッド》(1996–1997年)は、極限の切なさと繊細さに満ちており、観客やアーティストたちに強烈な衝撃を与えた。

2000年から2002年にかけてロンドンのナショナル・ギャラリーのアソシエイト・アーティストを務めて以降、カルティエ現代美術財団での展示、サンパウロ、ウィーン、フィンランドなど世界各地での展覧会を経て、ミュエクの濃密な彫刻作品は、観る者の身体、精神、そして感情を揺さぶり続けてきた。彼は、リアリズムに満ちた豊かな表情、ポーズ、身振りによって、脆く儚い人間の魂をすくい上げる。描かれる人物たちは、決して華やかでも、理想化されてもいない。むしろ飾り気がなく、シワや毛穴、脂肪、シミ、肉体的な不完全さといった人間のありのままの姿を忠実に映し出している。それらの作品は強力な磁力を放ち、私たちに人間の存在の根源をより深く探求させる。


ロン・ミュエク《枝を持つ女》(2009年)カルティエ現代美術財団蔵 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館(2025年) 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館

会場で最初に迎えてくれる《枝を持つ女》(2009年)は、今回が日本初公開となる作品である。裸の女性が身を反らせ、両腕に抱えた大きくて持ちにくい木の枝の束をなんとか抱えようと格闘している。彼女の佇まいは力強く、意思の強さを感じさせる一方で、その肌には過酷な労働による引っかき傷が刻まれている。長く伸びた枝の束の重みと、無防備な裸体のコントラストは、彼女の直面している苦難や、どうにもできない無力感を観る者に生々しく伝える。


ロン・ミュエク《イン・ベッド》(2005年)カルティエ現代美術財団蔵 展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(2026年) 撮影:吉村昌也 画像提供:カルティエ現代美術財団

本展で最も人々を魅了する作品のひとつが、長さ6.5メートルという驚くべきスケールを誇る巨大な《イン・ベッド》(2005年)である。ベッドに横たわり、膝を立ててくつろぐ中年女性の姿が描かれている。そのポーズ自体はありふれた日常のひとコマのようだが、どこか遠くを見つめる彼女の鋭い視線と、あごを支える手は、観る者の尽きない好奇心を刺激する。「彼女は一体何を考えているのだろう? 孤独なのか、不幸なのか、それとも怯えているのだろうか?」 肌のシワや折り重なり、関節、爪、顔の輪郭の細部に至るまで、驚異的なリアリズムで表現されている。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE