ジェイコブ・ハシモト

PEOPLEText: Aya Shomura

ニューヨークのメリー・ブーンギャラリーで始まった個展「世界初の月面着陸」について教えてください。

この展示は、6つの壁を使った作品と小さな樹脂と木を使ったインスタレーションで構成されています。ここでも、作品は風景の土台を基に組み立てられていますが、分岐して冷戦の本の表紙や宇宙の天動説の地図、大量輸送機関、軌道、太陽系外惑星など、無数の他の参考資料を少しずつ引用して作りました。

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「巨大ガス」2014年、アクリル、 紙、 ダクロン、 木、 竹 Photo © Fredrik Nilson

プレスリリースでは、「今回の手法は(物理的に永久に続くのかもしれないが)初期の大きなスケールの作品からの旅立ちを意味している。一方で、建築的なボリュームは、2014年の現代美術館パシフィックセンターで展示し評判を得たインスタレーションを彷彿させる半透明のディスクにより定義されている。」と述べられています。このことについて、本人としてはどう思いますか?

おもしろい引用だと思っています。その展示についてのプレスリリースを実際にはまだ読んでいないのですが、きっと小さなインスタレーション作品について言っているのだと思います。彼らが何故その作品と2014年の現代美術館の展示「巨大ガス」を結び付けたいのかは何となくわかります。私が考えるに、この作品は「巨大ガス」のアート作品の自然的な派生物です。インスタレーションの中に現れるビジュアルや図形的なボキャブラリーは実質上、「巨大ガス」を複雑化してはいますが、新作の屋台骨は同じことなのです。新しい作品はますます広がり、紙から樹脂への素材の変化は複雑で挑戦的な手順を見せるようになった。このプロセス上の変化はこのアート作品の最も意義深いポイントで、実際に、本当に美しい結果を導いたと思っています。

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「木 Ⅲ」 2008年、スイス針葉松、乳色ガラス、P.S.T. エレメントとライト Photo © Jacob Hashimoto

ミラノ自然史博物館の「自然広告」とブランツ美術館の「海 — その他の風景」は、最近のあなたの作品と異なるように見えます。それぞれの作品のコンセプトを教えていただけますか?

この二つの作品は、今まで話してきた作品よりもかなり古いものです。「自然広告」を含むアート作品は2008年からのライトアップされた木を表現する無題の作品です。半透明の地球に埋まっているライトはついたり消えたりしながら点滅するライトの嵐雲を作っています。もともとはライトがつく際に音が鳴るもので、イタリアのガルダ湖から当時私のスタジオがあったヴェローナの街へと移動する雷雲の音です。

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「艦隊」2011年、木、 ステンレス・スチールケーブル、 綿、 塗装された金属 Photo: Michele Alberto Sereni

もう一つの過去の作品「艦隊」も ブランツ美術館の「海 – その他の風景」に含まれます。800隻の小さなヨットで作った彫刻作品です。一つ一つのボートは、連なる振り子に織り交ぜられて、まるで見えない水のシートの上に浮かんでいるかのように、ひょいと浮かんでは沈みます。1999年に最初に作ったこのプロジェクトはその時に私が取り組んでいたいくつもの大きなスケールの風景彫刻の一つでもありました。そして1997年の、10000個の凧で作った空の彫刻「無限に広がる空」のすぐ後の作品でした。

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