アルベルト・ジャコメッティ展「フェイス・トゥ・フェイス」

HAPPENINGText: Victor Moreno

新型コロナウイルスの余波の中ストックホルム近代美術館で開催されていたアルベルト・ジャコメッティの展覧会「フェイス・トゥ・フェイス」が、数週間閉館したものの、2021年4月末に再開された。本展「フェイス・トゥ・フェイス」は、アルベルト・ジャコメッティの作品をスウェーデンで20数年ぶりに紹介する大規模な回顧展で、スイスの彫刻家である彼の卓越したモダニズムの作品群を堪能できる絶好の機会であり、スウェーデンで展覧会を再び楽しむことができる喜びをも意味している。


Installation view of “Giacometti – Face to Face”, Moderna Museet, 2020. Photo: Åsa Lundén / Moderna Museet © Estate of Alberto Giacometti / Bildupphovsrätt 2020

ジャコメッティはキュビズム、シュルレアリスム、表現主義の重要な彫刻家であることは間違いないが、彼は抽象的な作品を残したまま、具象主義の探求をし始めた。その後ジャコメッティはジュネーブの美術学校で学び、21歳でパリのグランド・ショーミエール・アカデミーで彫刻を学んだ後、人生の大半をそこで過ごしたことで、パリの知的生活を送る機会に恵まれた。第二次世界大戦後のパリが当時、最も魅力的な芸術の中心地であったこと、特に作家のジョルジュ・バタイユ、ジャン・ジュネ、サミュエル・ベケットとのつながりがあったこともその理由だ。「フェイス・トゥ・フェイス」は、ベケットの非合理的で閉鎖的な世界、バタイユの堅苦しい慣習への激しい反発、ジュネの社会の片隅での生活への敬虔な描写との出会いが、ジャコメッティの作品に残した痕跡を辿ることを目的としている。


Installation view of “Giacometti – Face to Face”, Moderna Museet, 2020. Photo: Åsa Lundén / Moderna Museet © Estate of Alberto Giacometti / Bildupphovsrätt 2020

この時期、抽象芸術が流行していたが、ジャコメッティは超現実的な探求から離れ、先史時代の美術や西洋以外の美術からインスピレーションを得ることにした。さらに、何よりも人としての在り方と、権利についての世界を探求した。彼の長身で細身、そして壊れやすい人体の表現は、回復力のある人間性のイメージと結びついている。


Installation view of “Giacometti – Face to Face”, Moderna Museet, 2020. Photo: Åsa Lundén / Moderna Museet © Estate of Alberto Giacometti / Bildupphovsrätt 2020

本展で最初に出くわす作品は、故郷スイスのスタンパにある父親のスタジオで制作された、人の頭を表現した彼の初期の作品だ。後に、彼の描写は目の前のモデルや、身近な人、時には記憶を頼りにすることもあると話している。リアルな描写と記憶との類似を描きながら、リアルなものとそうでないものとがせめぎ合う、記憶を頼りに制作された作品は、作品群の中でも非常に興味深い。私たちが知っていること、思っていることを超えて、現実が目に見える形で人間の形を描くことが、ジャコメッティの作品の重要な側面なのだ。

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