オコイマツ

PEOPLEText: Ayumi Yakura

今回の展覧会では、ロンドンで制作した写真のコラージュ作品も展示されています。一見、宝石の欠片やモザイクタイルのようにキラキラ輝いていますが、よく見ると茶色い部分が土砂の写真で驚きました。色鮮やかな部分はクレーン車やコンテナですよね?

コラージュ作品で使っているのは、自分で撮影した工事現場の俯瞰写真です。ロンドンの名物と言えば登場する、赤い2階建てのダブルデッカーバスがありますね。その2階の席に座ってあてもなくロンドン中をバスでグルグル回るのが好きで、よく乗っていたのですが、2階席に座るとルート上にある工事現場の中の様子が、フェンス越しによく見えるんです。

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「A transition after the rain」2012年, 465 x 900 mm, 紙に写真のコラージュ

土があらわになっていて、鉄筋や土管がバラバラと置いてあり、その間をゆっくりと重たそうに、細い首を動かしているクレーンや重機がいる…。重い機械のメカニックな格好良さと荒々しい土の対比。何となく注目している内にすっかり工事現場に魅せられてしまいました。

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コラージュの素材となったロンドンの工事現場の俯瞰写真, 2007年, ロンドン

通学などのルート上にあると、毎日の微妙な変化が見られる訳です。トレーラーの通った跡が土の色を変えていたり、穴が少し深くなったな、とか、あの柱が立ったな、とか、雨後の工事現場など垂涎ものですね(笑)大きな水たまりができて、水を吸った土の固まりの横に青空を映している、澄んだ水面がある。そんな工事現場を、隣の高層ビルの屋上など俯瞰できる場所から撮影して、切り抜いて、再構成したのがこのコラージュ作品です。「再工事」して、一瞬で変化していく工事現場の魅力をより引き出すというイメージです。

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庭に工事現場のミニチュアを作った実験的な作品, 2007年, ロンドン, 直径約500mm, ミクストメディア

現在は写真のコラージュではなく、文房具屋のペン売り場で集めた試し書きの線で都市を描いていらっしゃいます。なぜ素材と技法を変えたのですか?

写真のコラージュをいったん止めたのは「素材(メディア)として少々弱い」という理由があります。紙に写真の切り抜きを貼付けていくのですが、何層にも重ねて貼っている部分は絵の具と違って安定感がなく凹凸が気になる。作り手の細かいこだわりかもしれませんが…。

そう考えている時期に、試し書きの線を使ってみようというアイディアが出てきました。工事現場も都市の一面を表していますが「それ以外にも街に転がっている素材はあるのじゃないか」と考えている内に、ふと出てきたモチーフです。「試し書きを使ってどのように作品にするのか」に関しては悩みに悩んで、数年熟成させました。

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