アウトを言い渡されたアート ー社会に切り込むアーティストたち。アートを前進させるには。

HAPPENINGText: Yoko Akiyoshi

「気合い100連発」(2011) © Chim↑Pom
Chim↑Pom「気合い100連発」ビデオ, 2011, 10:30, © Chim↑Pom, Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

稲岡:「気合い100連発」は海外での展示が多く、これが代表作と思われてるくらいです。ですが、日本の国際交流基金の出資で海外で展示するという話があった時に、キュレーターと基金のスタッフと打ち合わせの際に「(気合いの中で青年たちが言う)“原発、放射能、福島”がひっかかる」と言われ驚きました。散々海外の色んな展示で見られてる映像作品だし、その他にも「韓国、慰安婦」の問題もNGだと言われたからです。結局その時は別の作品を出すことにしました。基金は外務省の外郭団体なので、その時の外務省の意向に添わなそうなものは先回りして気を使うのは分かります。それでも以前はもう少し柔軟な対応ができていたのが、場合によっては首相の側近から直接クレームが入る事もあるらしく、安倍政権に入ってからあからさまに検閲の体制が厳しくなっているのを実感しました。自主規制や検閲などをチン↑ポムの作品は受けやすいので、そういうのだけを集めて展示したら面白いと以前から思っていました。実際に展示で撤去にあった作品ではないんですが、展示前に政治的理由から作品変更を求められたり改変を要求されたもの、展示の制作段階で問題になり展示を中止せざるを得なかったもの等を、運営にも関わっているアーティストランスペースのGARTERギャラリーで開催したのが「耐え難きを耐え↑忍び難きを忍ぶ」です。

作田:自主規制って多くの場合「規制してません」というふうに見せるのが多いですよね。

稲岡:特にチン↑ポムって無視してやってるイメージを持たれます。犯罪上等みたいな。

作田:他の作品に(この部分は変えてくれなど)そういう要請がある時、まず何を考えますか?ルールというか傾向はありますか?

稲岡:海外の展示では下見に行くこともあり、その国の一番面白いところを表現したいのですが、その国の面白いところとは、得てしてその国にとって発表されたくないことが多い。表側の「綺麗なところだけを見て」というのがあります。それじゃ面白くないと提案すると「ノー」と言われてしまう。そうなったら(本来表現したかったことを)含みつつ、すり抜けられる案を考えます。ぱっと見だけでは、バレないようなことを考える、よくよく見ると最初にやりたかったことが盛り込んであります(笑)。

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Chim↑Pom「耐え難きを耐え↑忍び難きを忍ぶ」展, 2015 © Chim↑Pom, Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

作田:私設のスペースを持っていることで「耐え難きを耐え↑忍び難きを忍ぶ」展ができたのでしょうか。

稲岡:チン↑ポムを好きな人やこの人たち面白いなって思ってくれている人の多くは、美術の専門的な教育を受けてないが勢いがあって、強くてリアルです。でも発表の場がない、そこで、自分達だけではなくチン↑ポムが面白いと思う作家を、表では発表の場がない人達の作品を出していきたいとは思っています。

作田:岡本さんも京都にギャラリーを持っています。「バッタもん」の型紙をウェブで公開し、いろんな人に作ってもらい展示もされています。

岡本:LV社のおかげで「誰かが責任を取れる場所がないと展示できない」と学んだので、4年前にギャラリー「クンスト・アルツト」を作りました。性的な表現など、僕が責任を取れる範囲で面白い作品を集めてやってます。他の作家にも声をかけて「美術ペニス」という企画展もやりました。

LV社とのいざこざの際にも、「ディズニーだけはやるなよ」とか、「次はディズニーだ」とふざけて言われるので、ついに禁断の果実に手を出してしまいました(笑)。自分一人が消されるのは嫌なので、作田さんを巻き込みました。ディズニーはご存知のように、皆さんの知っているキャラクターの著作権を沢山持っています。著作権の王様です。規制が強まると子供の落書きもおばちゃんの手芸もアウトになる息苦しい社会になると危惧しました。アートはグレーゾーンをいじれるのが魅力です。

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岡本光博「SUHAMA / Recycling Kills the Copyright」 2014〜, リサイクル品(ぬいぐるみ), がま口, Photo: 澤田華

僕の作品「スハマ/リサイクリング・キルズ・コピーライト」では、偶然にもわが家の家紋がミッキーを逆さまにしたような形ということもあり、武士の末裔なので、敵将のミッキーの首を切って「さらし首」にしているわけです。しかし、これを作ってるとミッキーの胴体が散らばってるどうしようもないアトリエ状態になるので、親が来る時に気を使いました。ミッキーの体も使おうと、白い手袋で人格を与えられるらしいディズニー・ルールで、「ミッキー・ヒューマノイド」を作りました。
D社は何も言ってきていません。もちろん(作品展示を)知っています。結論としてV社のように圧力をかけることなく、一般的な著作権侵害と美術館、ギャラリーでの作品展示を線引きしている。立派というか日本の会社もV社も見習って欲しいです。

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