エルネスト・ネト展「狂気は生の一部」
HAPPENINGText: Yumino Hagiwara
エスパス ルイ・ヴィトン東京のオープンから、これまで4度の展覧会が行なわれたが、この現代的なガラス張りの展示スペースをこれほどまでに有機的で人間くさい空間へと変化させたアーティストはいないだろう。
今回の展覧会「Madness is part of Life」(狂気は生の一部)では、ブラジル人アーティストのエルネスト・ネト自らがキュレーターを務め、連作「Balanço」(ブランコ)に属する4点の新作を発表した。
A vida é um corpo do qual fazemos parte, 2012, われわれは生という体の一部、ポリプロピレン及びポリエステルのひも、プラスチックボール、780 x 786 x 1486 cm Photo: Jérémie Souteyrat. Courtesy of Espace Louis Vuitton, Tokyo
これまでもそうだが、ネトの作品のテーマは常に人間の身体と密接に結びついている。作品の素材感や形状が身体を想起させるということ以前に、訪れた人と作品との関係が自らの身体的な体験をもってしか成立し得ないのだ。(このような作品をネトは「体験型彫刻」と呼んでいる。)そうして作品の内部へとアフォードされた鑑賞者は、自分の身体、身体と作品との境界、そして外の世界を行き来しながら空間とそこにいる自分自身を感じることができる。ネトの作品は人間の身体と空間のデバイスであり、それらの関係性の現れでもある。
A vida é um corpo do qual fazemos parte, 2012, われわれは生という体の一部、ポリプロピレン及びポリエステルのひも、プラスチックボール、780 x 786 x 1486 cm Photo: Jérémie Souteyrat. Courtesy of Espace Louis Vuitton, Tokyo
今回のインスタレーションは、ポリエステルのロープとプラスチックボールを素材とした4つの作品の組み合わせから成る。そして、その中心となっているのが「A vida é um corpo do qual fazemos parte」(われわれは生という体の一部)である。これは、幅・高さがおよそ7.8m、奥行きが15メートル近くもあり、それが天井から宙吊りになっているもので、天井高8.45メートル、面積193平方メートルという展示空間の中でのボリュームとしてはとても迫力のあるものだ。
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