リ・ウーファン:ヴェルサイユ

HAPPENINGText: Valerie Douniaux

Relatum長年にわたって、ヴェルサイユ宮殿は著名な現代アーティストの壮観な展覧会を催してきた。2010年に物議を醸した村上隆、あるいは2013年のジュゼッペ・ペノーネの展覧会を経て、フランスで最も象徴的な場所のひとつであるこの荘厳な空間に、リ・ウーファンの静謐で力強い作品を設置するときがやってきた。

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Relatum Dialogue Z © Tadzio Courtesy the artist, Kamel Mennour, Paris and Pace, New York

リ・ウーファンのようなアーティストを選出することは驚きに映る。
というのも、彼の実直で、殆ど禁欲的ともいえる作品は、ヴェルサイユ宮殿の華麗さとはまるで逆のように思われるからだ。しかし、これらのもっとも違った2つの世界観の遭遇は成功しており、作品は見事に環境に溶け込み、同時に庭園がもつクラシカル且つ幾何学的なエレガンスと力強いコントラストを作り上げている。

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Relatum L Arche de Versailles © Tadzio Courtesy the artist, Kamel Mennour, Paris and Pace, New York

リ・ウーファンは、宮殿庭園の壮観な眺望の軸に設置した、印象的で空気のように軽いスチール製のアーチ(“ヴェルサイユのアーチ”)で観る者を迎える。この金属の虹は開かれた門のようであり、自然と宇宙に調和する別世界への招待状である。リ・ウーファンはこのように、アジアと西洋それぞれの庭園の観念を繋ぐ挑戦的で意義深い試みを行い、また互いの観念を強化する。

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Relatum L Arche de Versailles2 © Tadzio Courtesy the artist, Kamel Mennour, Paris and Pace, New York

フランスにおける自然観の縮図であり、まったく概念的で人間の意思と娯楽にゆだねられたヴェルサイユ宮殿の庭園は、アジアのそれとは全く正反対のようだ。アジアでは、自然は宇宙と純粋に一体化し、もっとも完璧で精神的な形で鑑賞できるよう造園すべき、とするからだ。彼の作品で、リ・ウーファンは、この世の完全に分岐したと概念として現れ得るものをヴェルサイユ宮殿に持ち込み、それでもなお、散策する者に驚きと感動を与え、バランスと調和を探しあてることに成功したのだ。

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Portrait of Lee Ufan Versailles © Tadzio

リ・ウーファンは1936年に韓国の山村に生まれ、20歳のとき日本に移り住んだ。そこで彼は哲学を学び、朝鮮半島統合のための政治活動に参加した。同時に、彼はアーティストとしてのキャリアをスタートし、抽象的表現と日本の伝統的な絵画への関心を明らかにした。批判的、理論的である彼の制作手法と作品は、関根伸夫(1942ー)や菅木志雄(1944ー)ら、同世代の日本人アーティストとともに“もの派”を設立し、広く認知されるようになった。“もの派”という名前は文字通り、“ものの流派”と訳す事ができ、グループのメンバーは、石や鋼板など、自然物、人工物に関わらず、シンプルで加工されていないものを選び、それら要素の関係性に主眼を置いた。まったく、今日にいたっても、リ・ウーファンの作品は、まるで生命を持って呼吸し、さらなる不動さを思わせる鋼板と静かに会話を営んでいるかのような岩石を用い、安らかで強力な両極端の感情を湧きたたせる。

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Relatum L ombre des etoiles Ⅱ © Tadzio Courtesy the artist, Kamel Mennour, Paris and Pace, New York

東洋的な哲学と美学に従い、作品の間のさまざまな空間は、はなればなれの作品要素と同様の重要性をもち、作品が持つエネルギーは、その環境を取り囲み、それらが設置された限られた空間をも凌駕する。ヴェルサイユ宮殿でのもっとも大きな作品は、完璧なまでにこの原理を描き出し、一種の東洋的なストーンヘンジを想起させる(”星の陰”)。注意深く視界から隠され、曲りくねった径の果てで突然、力強く存在を現す。そしてサークル状に配置された作品は心に焼き付き、同時に心をなだめ、訪れる者にしばし立ち止まって語り合い、あるいは瞑想するよう誘う。

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Relatum La Tombe hommage a Andre Le Notre © Tadzio Courtesy the artist, Kamel Mennour, Paris and Pace, New York

リ・ウーファンが言うように、彼の作品は、『オブジェとしてよりもむしろ空間力学もしくは配置による風景として機能する』ことが重要なのである。彼の作品は、この展覧会のために特別につくられたものであり、周りの環境と共鳴し、またこの場所のユニークな歴史を作ってきた人間、とくにフランスの庭(の代名詞であるヴェルサイユ庭園)を造ったアンドレ・ル・ノートル(1613ー1700)に敬意を表している(”墓-アンドレ・ル・ノートルへのオマージュ”)。作品はまた、緑の葉が風に優しくそよぐような、もっとも謙虚な自然の現れ(”波長の空間”)を、あるいは、リ・ウーファンが『地球に降り立ち、座して囁く』と想像する、北斗七星の輝く美しさへの賛美(”星の陰”)をそっとほのめかす。

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Cotton Wall © Tadzio Courtesy the artist, Kamel Mennour, Paris and Pace, New York

庭園のあらゆる場所に設置された作品は簡単には見つけられず、訪れる者をある種のスピリチュアルな冒険、自然の迷宮と穏やかな秘密の大地をめぐる静かな探求へ放り込む。観光客団体の流れは別として、作品のうちひとつだけが宮殿に置かているが、サックコートを着た上品な女性や乗馬している紳士に出くわしても驚かないであろう静かな路地で、一つの庭園訪問で数時間を埋めるには十分である。過去と現在、東洋と西洋、伝統美術と現代美術を調和させる良い方法だ。

リ・ウーファン:ヴェルサイユ
会期:2014年6月17日(火)〜11月2日(日)
時間:8:00〜20:30(パレスは9:00〜18:00、月曜休館)
会場:Château de Versailles
住所:d’Armes, 78000 Versailles
TEL:+33 (0)1 30 83 78 00
http://www.chateauversailles.fr

Text: Valerie Douniaux
Translation: Yoshimi Irie

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