デザイン・フィルム・フェスティバル・シンガポール 2014

HAPPENINGText: Fann Zj

「デザイン・フィルム・フェスティバル・シンガポール」は、まさに大空へ飛び立った!

特別協賛社であるシンガポール航空では、9月から12月までの間、機内サービス「クリスワールド」で上映され、空の上で毎日5万人を超える利用客に届けられる。一方、地上では何が行われているか? 

アジア初となるフィルム・フェスティバルのメイン会場である、オーチャード通り沿いの「SOTA」(スクール・オブ・ジ・アーツ)では、「アートとデザインの比率」をテーマに、4つのインスタレーションと、12の魅惑的なデザイン・フィルムを紹介する。デザイン・フィルムは、建築、ファッション、写真、ストリート・アート、モーション・グラフィック、テクノロジーそしてデザイン・サブカルチャーに特化した、まるで新鮮な空気を吸い込むような新しい100を超えるノミネート作品の中から、機能かそれとも表現かといった、非常に曖昧なアートとデザインの境界を探る。これらの作品の中から、ワールドプレミアが2つ、アジアプレミアが6つ、東南アジアプレミアが3つ、シンガポールプレミアが一つの計12作品が選出された。

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安藤忠雄:空虚から無限世界へ」は、日本人建築家・安藤忠雄の作品と哲学を巡る旅である。実際に訪れることのできる魅力的な建築ドキュメンタリーであり、安藤氏のユーモア溢れる発想の一部はオフィスの同僚によって引き出されるのが分かる。「六甲の集合住宅」のような初期作品から、有名な「光の教会」、ベネッセ・アートサイト・直島、ごく最近のベニスとミラノのプロジェクトまで、彼の時間や空間、自然へのアプローチと戦略は、監督であるマティアス・フリックによって、この旅をまっすぐに前進させ、彼の建築作品へ引き寄せられていく。

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ヴィヴィアン・マイヤーを探して」。ジョン・マルーフは、中古オークションハウスで偶然にも発見されたネガフィルムから、そこに写っていた驚くべき現代的な写真作品の背景を解き明かす決意をした。ベビーシッターであり、写真家であったヴィヴィアン・マイヤーは、自身のアイデンティティーを探し続けていた。彼女のかつての雇い主と面倒をみたその子ども達へのインタビューによって、ヴィヴィアンが素晴らしい作品を生み出した背景に疑問を投げかける。そこには紛れも無く芸術家のオーラがあったのだ。この旅はニューヨークから始まり、最後にフランスの小さな村に行き着いたときには、ヴィヴィアンの作品が光をもたらした。

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イヴ・サンローラン」は、ファッションがより情熱に溢れていた時代に私たちを連れ戻し、規範を壊し、デザインの語彙を定義づける。イヴ・サンローランと彼の恋人の美しきコレクションの世紀のオークションから始まり、若きデザイナー・サンローランの出発点からキャリアを積み上げたときの戦争による不安定な時代背景を垣間見る。全てはスムーズにはいかない中で起こる対立とアイデンティティー、そして愛の物語は、それぞれの想像の中にあるYSLをより身近に感じさせるだろう。

デザイン・フィルム・フェスティバルは、これからもっとより高く飛ぶだろう。初開催であった2010年の1,800の来場者から、今年は6,500人(機内の乗客は含めない)と増え続け、それは確かに遠く多くの人々にまで届けられるようになった。空に限りがないように、フェスティバルの雰囲気やグッズでさえ、より高く飛び立つことにもはや限界はないのである。

A Design Film Festival Singapore 2014
会期:2014年9月5日(金)~14日(日)
会場:Shaw Theatres LIDO
住所:350, Orchard Road, 5th/6th Floor, Shaw House, Singapore 238868
TEL:+65 6440 7330
https://www.designfilmfestival.com

Text: Fann Zj
Translation: Keiko Orikasa

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鈴木将弘
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