バーニングマン 2013

HAPPENINGText: Isao Nishiyama

サンフランシスコからハイウェイ・ルート80を北東に4時間ほど走ると、乾いた空気に包まれ突如現れる小さなカジノシティ、リノ(Reno)。バーニングマンが開催されるブラック・ロック・シティに最も近い人口およそ20万人の小さな街に、大型のRVや改造された派手派手しい自転車を積んだバンが最後の補給を行うべく無数に押し寄せ束の間の賑わいを見せる。一週間分の飲料と食料、厳しい砂漠で生き抜くためのサバイバル・ギアを買い求める半狂乱なバーナー達によって、リノのウォルマートは小惑星の衝突直前を思わせる乱れ模様だ。

バーニングマン 2013

2013年8月26日から9月2日までアメリカ・ネバダ州ブラック・ロック砂漠にてバーニングマン2013が開催された。参加チケットは数ヶ月前からオフィシャルサイトにて発売され、世界各地から集まったおよそ68,000人超の参加者が砂漠の厳しい気候の中で1週間だけ形成されるブラックロックシティの市民として互いに協力し合い生活を共にする。カフェで販売されるコーヒーなどのソフトドリンク、食料を冷やすための氷を購入する以外に貨幣は使用できず、あらゆる商行為は禁止されている。世界中ここにしかない果てしなく創造的で自由なコミュニティの一部になるのだ。

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バーニングマン2013のテーマはカーゴ・カルト。シンボルである「ザ・マン」は超巨大な木製のUFOを模した台座の上にそびえ立つ。ザ・マンから北へ数100mの距離に見える巨大なピラミッドは人々が祈りを捧げる特別な場所ザ・テンプル・オブ・ホーリネスだ。ロサンゼルス・カルバーシティをベースに活動する建築家・アーティストグレッグ・フレイシュマンを中心に設計された幾何学的なブロックを組み合わせる画期的な建築法で建てられている。

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このテンプルを目指し、キャンプサイトの中心に位置するセンタープラヤから一直線に伸びる道を白い衣装を纏いランタンを灯しながら歩くランプ・ライターズも必見。バーニングマンが砂漠で開催されるようになって以来、参加者によるボランティアにより続けられている伝統的な儀式だ。その他にもザ・マンが燃やされる夜に開催される、身体と精神の包容そして拡張を促す美しい炎の儀式「ファイヤー・コンクラーヴェ」、世界のどこにもないプリミティブなビートを轟かせるドラムショー「アンビエント・ドラマーズ」はスペクタクルに満ちている。その場にいる者すべてを繋ぎ、薄汚れた精神を洗い流すようなヴァイヴレーションが最高潮のフィナーレを演出した。

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バーニングマンではおよそ70を越える公式アート・インスタレーション、世界中のクリエイターが協力し、半年~1年をかけ制作される24体のCORE(サークル・オブ・リージョナル・エフィジーズ)と呼ばれる木造のスカルプチャー(最終日にザ・マンもしくはテンプルと共に燃やされる)、そして金銭的なバックアップを受けず、参加者の自由意志で企画・制作された200のアート・インスタレーションが1週間絶え間なく開催・公開されている。その中から一部を紹介すると、バージニア州フェアファックスのアーティストローラ・キンプトンとジェフ・ショーンバーグによる巨大なタイポグラフィ作品「ビリーブ」は、過去4年間に渡ってシリーズ化されており、バーニングマンには欠かせない人気のインスタレーションとなっている。カリフォルニア、グレン・エレンの彫刻家ブライアン・テドリック制作の鉄鋼で作られた巨大な「コヨーテ」は、その美しいフォルムとともに砂漠に響く音のインスタレーションとして人気を集めた。さらにはロサンゼルスのエイフィドイデアによる地中に不時着した未確認飛行物体「クラッシュ・サイト_アルファ-13」や、サンフランシスコのデイブ・ガートラーによる巨大な手「ハンズ」、フランスのCORE project「ステアウェイ・トゥ・ヘブン」など、精巧に設計され高いクオリティで定着された数々のクリエイティブに驚かされ続け、リスペクトを感じずにいられない。

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初参加の僕ら二人は小さなテントと最低限の装備でキャンプを張り、遠くで近くで絶え間なく鳴り響くエレクトロを聴きながら初日の夜を恐る恐る過ごした。普段は満天の星空が広がっているであろうブラックロック砂漠の空は、無数のテーマキャンプやモンスター・ビーイクルが放つレーザーや炎、光、そしてバーナー達が放つ熱狂により明け方まで暗くなる事はない。開催から2日が過ぎても、普段は虫も生息しない乾涸びたこの砂漠へ次々とやってくる大型のRVやバンが長い光の列を作っている。気の遠くなるような道のりから解放されたブラックロックシティの新たな住民たちは歓喜の雄叫びを上げ、既存の市民より熱い歓迎を受ける。酒や食べ物を分け与えられたかと思うと、鞭打ちによる祝福を受ける。通りを歩けばキャンプに招き入れられ、砂漠の厳しい熱線や夜の寒さから一転、居心地の良い彼らの住まいの中で、まったりとした時間を楽しむことになる。

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特に僕らが良くしてもらったのがオレゴン州から大きなRVで参加していたパキスタン出身のザ・ハとサイードの二人。毎日キャンプの前に座り、通りかかる通行人に声をかけては、ありったけのココナッツジュース、ビールやテキーラを振る舞う。大企業向けのシステム開発をしているという二人はバーニングマンへは4回目の参加という事で砂漠での生活も板についている。彼らのキャンプの横には特設のステージがドーム型のテントの上に備え付けてあり、気まぐれに開催されるライブも手伝い常にいい気分のバーナー達で賑わっていた。僕らも再来月ポートランドに行くことにしていたので、彼らの家へ遊びに行くこととなった。

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国籍や人種は意味を無くし(話が深まれば逆に強い意味を持つ)、この場所に共にいることを喜び快感を求めひた走る、かくも暖かく汚らわしい異世界で過ごす1週間。キャンプを渡り歩き、多くのバーナーと交流を交わすも良し、大音量のスピーカーの前で朝まで踊るも良し、一夜だけの関係を持つも良し。倒れ痙攣を起こす者、仲間とはぐれ明け方のプラヤを彷徨う者。ここでの過ごし方に決まりは無い。ただひとつ求められるのが、スローガンである“傍観者になるな”なのだ。

Burning Man 2013
会期:2013年8月26日〜9月2日
会場:アメリカ・ネバダ州ブラック・ロック砂漠
http://www.burningman.com

Text: Isao Nishiyama
Photos: Isao Nishiyama

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