齋藤周展「昨日からの眺め」

HAPPENINGText: Satsuki Miyanishi

「今」という時間は過去の集積の上にある 

ホテルのエントランスからロビー、ラウンジ、そして客室へと、春を告げるようなカラフルなインスタレーションが出迎えてくれる。柔らかい色で奏でられる作品の1つ1つを見ていると、懐かしい風景や、その時の風の音、匂いまでもが浮かんでくるようだ。記憶の中の様々な風景、ぼんやりとした記憶。ふとした瞬間の様々な景色がここにある。表現されているのは、特別なものや非日常ではなく、私たちのすぐそばにあるもの。

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クロスホテル札幌にて札幌在住の作家・齋藤周(さいとう しゅう)の個展「昨日からの眺め」が4月1日から5月31日にかけて開催される。齋藤周は美術教育の現場に関わりながら札幌を拠点に積極的に創作活動を続けている。札幌では約1年ぶりとなる本個展では近作を中心に描き下ろしの新作を含む約20点を館内に展示する。

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クロスホテル札幌では、2007年のオープン以来、「ART X」(アートクロス)と題して館内でのアート作品の展示などを通じアートに力を入れてきた。2011年からは、SHIFTとのコラボレーションにより道内作家の展覧会を行い、札幌から世界に向けて発信している。

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この展覧会は、まちなかアート・クロス・エディションとしてクラークギャラリー+SHIFTがキュレーションを担当する展覧会の第7弾。まちなかアートは、街中にアートが溢れ、気軽に楽しめる環境づくりを目指すプロジェクトでギャラリー、作家、店舗が一体となり、アートのある日常をつくるというもの。

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齋藤周は、日々生活する風景の中に繰り返される小さな気づきや、些細な瞬間の出来事を拾い上げ、色と形で再構成し、作品を媒介として人やその想いと繋がる空間をつくりあげる。フロント、ラウンジの壁に飾られた作品の他に、白い凹凸のデザインに合わせて作品がはめ込まれたインスタレーション、ロビーの棚には一つずつ違った表情を見せる小作品がずらりと並ぶ。絵画の再構築ともいえる、場との関係性を意識したインスタレーションも齋藤周の特徴である。エントランスのガラスに施された小さな作品の模様のさえもホテルに馴染み、彩りを与えている。

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今回の展覧会のタイトル「昨日からの眺め」について作家はこう話す。『私は今自分が過ごしている場所、やっていること、人との関わりを昨日の視点から眺めて、今日という日を自分なりに確認することが多くあります。私に限らず「今」という時間は過去の集積の上にあるという感覚そのものを一種の風景にも似た色と形で表現しました』。柔らかい色使いの作品によって、レンガや濃い色の特徴的な壁も違和感なく彼の世界観に染まる。作品が白壁にしか合わないと思っていたという作家本人にとっても新しい発見だ。

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ホテルという空間を活用した試みとして、これまでの展覧会で最も作品数の多い今回の展覧会では、客室にも作品が展示される。この部屋に宿泊すると作品の「昨日からの眺め」がデザインされたホテルで販売しているオリジナルレターセットもプレゼントされる。もともとこの部屋を指定するリピーターも多いようだが、いつもとは違った雰囲気を楽しめるこの部屋で、旅の思い出を手紙にしたためてみるのもいいだろう。

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春の柔らかい日差しを浴びたようなカラフルな配色で一見平和な風景のように見える抽象的な絵画。それとは対象的に様々なものを連想させる作品名から一種の物語性を内包している齋藤周の作品。この季節にふさわしい春の息吹を感じさせる齋藤周の世界をお楽しみいただきたい。

齋藤周展「昨日からの眺め」
会期:2013年4月1日~5月31日
会場:クロスホテル札幌
住所:札幌市中央区北2西2
主催:クロスホテル札幌
キュレーション:クラークギャラリー+SHIFT
協力:まちなかアート、株式会社正文舎
TEL:011-272-0051(企画部)
http://crossmet.jp/sapporo/

Text: Satsuki Miyanishi
Photos: Courtesy of Clark Gallery + SHIFT

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