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第16回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Tomomi Sakuma

一方、アナログな手法で多くの鑑賞者を驚かせたのがエンターテイメント部門で新人賞を受賞したミュージックビデオ、永野亮はじめよう」。新井風愉が監督し、簡単な工夫だけで「空中浮遊」映像を実現している。会場では舞台裏と見比べられる「裏バージョン」も同時に公開され、DIY精神を見ることができる。音楽も映像も暖かみがあり、幸福な気分になれる作品だ。

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『永野 亮「はじめよう」』新井風愉

「AKIRA」の原作者、監督として知られる大友克洋の「火要鎮(ひのようじん)」はアニメーション部門の大賞を受賞した。同作品は先日の第67回毎日映画コンクールで大藤信郎賞を受賞している。アニメーション予告映像では江戸町の大川端のパノラマ絵がこれから始まろうとする物語へ引き込んでくれ、作画のアニメーション表現と3DCGによる表現の融合が、斬新な映像を実現している。一緒に原画も沢山展示されていてカメラワーク、台詞、シーンの説明が詳細に書かれており、ファンにとっては貴重なものであろう。

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『火要鎮』大友克洋

フランス・ベルギーの人気コミックシリーズ「闇の国々」がマンガ部門での大賞を受賞。会場の壁には作者のブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンのサインが書かれていた。彼らは30年前からこの作品を共作しており彼らの重厚なストーリーはあらゆる芸術への深い素養に根ざし、1ページに1週間かけるという。また、イラストも緻密で、謎の都市群で繰り広げられる摩訶不思議な事件の数々が堪能できる作品だ。シネマート六本木のマンガライブラリーでは「闇の国々」を含めた受賞作品と審査員会推薦作品を閲覧できる。

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『闇の国々』ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン 訳:古永真一/原正人

最新技術を使った洗練された作品が多く、現代社会の不穏な状況を表現した作品と人間としての深みや暖かさを追い求め表現された作品が目立った気がする。メディア芸術祭の作品を通して、今が映し出されているようだ。

この芸術祭は今月24日まで開催されており、アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガと多様性にとんだジャンルと内容、会期中には上映会、公演、受賞者によるプレゼンテーションやシンポジウムが開催されるため多くの人がこのメディア芸術祭に足を運ぶ。

多彩な作品と、国内外のクリエイターに会えるこの機会を沢山の人に楽しんでいただきたい。

第16回 文化庁メディア芸術祭
会期:2013年2月13日〜24日
時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで
メイン会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
サテライト会場:シネマート六本木、東京ミッドタウン、スーパー・デラックス
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会
http://j-mediaarts.jp

Text: Tomomi Sakuma
Photos: Tomomi Sakuma

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