アートフェア東京 2012

HAPPENINGText: Noriko Yamakoshi

第7回目を迎えた「アートフェア東京2012」が、3月30日より3日間、東京国際フォーラムにて開催された。恒例の桜の季節に立ち戻って行われた本フェアは今回、展示ホール全面の5千平方メートルを使用、その会場規模を昨年の約2倍に拡大しての開催となり、出展ギャラリー企業総数160軒、招待客やプレスに向けた29日のオープンプレビューも含め、来場者数は過去最大の53,000人余りを記録した。

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アートフェア東京 2012 展示風景

古美術から現代美術まで、時代とジャンルを超えた作品が展示販売されるアートフェア東京において、山下裕二のキュレーションによる特別企画エリア「シャッフルII」は、フェアの特性を「現代美術の実験的展示」として理にかなった手法で体現し、存在感を放っていた。

またこれまでは場外に設置されていた若手ギャラリーに特化したコンテンポラリーアートセクション「PROJECTS」も本年度よりメインフロアに集結。更に今回新たな試みとして、日本のアートジュエリー市場を牽引する3つのコンテンポラリージュエリーギャラリーの初出展や、「ディスカバー・アジア」を基幹ビジョンに、アジアよりソウル・台北・北京を中心としたギャラリー・美術館の計9つが出展した。

またインスタレーションを主とした「PROJECTS」のスピンオフ新セクション「project in PROJECTS」においても型にはまらない多様で国際色にも富んだ才能が軒を連ねた。

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「カラバナ」岩田俊彦、「Ritual sake bottle」ロンドンギャラリー、仏手(鎌倉時代)

「いつの時代にも、どんなジャンルにも、芸術的実験がある」。昨年度よりスタートした「アーティスティック・プラクティス」プログラムのひとつとして企画された「シャッフルII」では、あらゆる時代とジャンルがある種カオス的に展示されているアートフェア東京の特徴を逆手にとり、5千年前の縄文土器から今を生きる現代美術作家の作品までが、まさにその価値観のシャッフルを意図に企画展示された。

現代の我々の目には歴史を背負った古美術に見える作品でも、創られた当時は現代美術であったかもしれない。場内には平安時代の四天王像や横浜美術館に展示中の松井冬子の作品、段ボールで創られた本堀雄二による仏像など、時代もスタイルも全く違う作品が展示されていたが、ジャンルという壁やルールを一度リセットし、訪れた人々に「能書きや理屈で理解するのではなく、ただ食べるように見て欲しい」という山下氏の思いから、選ばれた約20点余りの作品には一切キャプションは付けられなかった。

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「L’avalanche de Rouille 」© Philip Sajet

欧米に比べ日本ではまだ紹介される機会や場が限られている上、常に「工芸品」と「アート」カテゴリーの狭間で議論されている日本のコンテンポラリージュエリー。今回参加したギャラリーC.A.J.ギャラリードゥポワソンO-Jewel(オージュエル)の3つのギャラリーはそれぞれその草分け的存在だ。

素材そのものの価値に頼る、あるいはファッション装飾としてのみ考えられている従来のアクセサリーや装飾目的だけのジュエリーとは異なり、身につけられる「アート」としてのアートジュエリー市場を牽引してきた第一人者の一人、O-Jewelの大地氏は言う。『絵画や彫刻などのアート作品とアートジュエリーとの違いは、と聞かれれば、それは身に着ける事ができるアートであり、だからこそ文字通りより心・ハートに近いということだと思います。日々の生活の中で身につけられるアートジュエリーはより親密でパーソナルなアートワークなのです』。

彼女が手がける芸術家、フィリップ・サジェは「錆び」を探求し創作し続けている世界的なアートジュエリー・アーティストだ。彼の言葉はアートジュエリー・アーティストが大切にしているひとつの哲学を教えてくれているように思う。『アーテイストは何が価値があるものかそうでないか決めることができる。 私は錆びが貴重な素材だと決めた。それゆえに1992年、最初に錆びを使った作品を創りそれから わたしのこの素材への興味がうせるまでこれを使い作品を創ろうと決めた。 驚いたことに20年後の今でもまだ私に興味深い素材だ。』

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