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アートフェア東京 2012

HAPPENINGText: Noriko Yamakoshi

宮島達男名和晃平アニッシュ・カプーアなど国内外の現代美術家作品を取り扱うSCAI THE BATHHOUSE(スカイ・ザ・バスハウス)ブースでは、3月銀座にオープンした「DOVER STREET MARKET Ginza COMME des GARÇONS」への作品設置が記憶に新しい名和による新作と、安部典子による彫刻作品との二人展が展開された。

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「Direction #9~#12」名和晃平, 2012、「Flat File Globe 3B Red Version」安部典子, 2007

まず壁面に展示された名和氏によるペインティングが圧倒的な力で来訪者を迎えてくれる。縦横約2m程のキャンバスが横一列に4枚並べられたこの作品「Direction #9~#12」は、絵の具の自重のみで線を描いたという新作だ。その白と黒のシャープなラインコントラストの前面、ブース中央には安部典子による真っ赤なキャビネット作品が設置されていた。

中を覗き込むとそこには不思議な魅力を放つ積層造形が。ユポという白い紙を使用し、その一枚一枚をカッターで切りだして何百枚、何千枚と丹念に重ねて作り出す造形に取り組んできている彼女は2004年よりニューヨークに在住しながら創作を続けている。緻密に編みだされた地層を思わせるこの造形はキャビネットを人体のメタファーとし、内にある積層は「こころ」や「記憶」、時間軸の限界を超えた未来への予感など、捉えがたいものを目に見える形で表現しているという。二人展をキュレーションしたギャラリーの研ぎすまされた憶いが鮮烈に伝わる空間だった。

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「Popular Classics II」Holly Farrell, 2012

「PROJECTS」エリアに出展したメグミオギタギャラリーからは、今年3月、同ギャラリーにて個展「Book Shop」が開催されたホリー・ファレルによる作品が出品された。

カナダ・オンタリオ州北北東に位置するノースベイで生まれたファレルは、日々のストレスから逃れる為に絵を描き始め、全くの独学でその技法を身につけという。日常の中に存在する使い込まれた道具類を題材に好み、それらを肖像画のように描く彼女。油彩とアクリル絵の具で描かれたこの作品にはアーネスト・ヘミングウェイ短編集や、ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」、オー・ヘンリー「運命の道」などの著作が並ぶ。

生活の一部として無造作に並べられたであろう空間の断片を、その絶妙な色のバランスとテクスチャーとで見事に切り取った作品群は、あたかもフィルムの一場面のようであり、経てきた時間や匂いまでもが伝わってくるようだ。非常にパーソナルでありながら同時に見る者全てに物語体験の共有を静かに許してくれる、そんな作品に感じた。

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