アートフェア東京 2012

HAPPENINGText: Noriko Yamakoshi

「PROJECTS」コンセプトに収まりきらないインスタレーション作品が展示された「project in PROJECTS」エリアでは、ARATANIURANOより、精巧かつ遊びごころのある手法で見慣れた日用品に手を加え、ミニチュア風景のインスタレーション作品を創りだしている岩崎貴宏の作品群が出品された。

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「Out of Disorder」岩崎貴宏 Courtesy of the artist and ARATANIURANO Photo: 木奥惠三

「Out of Disorder (section)」(アウト・オブ・ディスオーダー)と題された作品ではチャコールやネイビー、深茶色等のニット生地がアクリルケースの中に注意深く積み重ねられ、絵画のような地層断面を描き出している。頂層にそびえる繊細な鉄塔や電波塔は、重ねられた布繊維をほどいて創られているという。敢えて日用品を素材に選び、その繊細な技法とユーモアとで素材に残された記憶の一部を選び取る岩崎は、その再構築した造形を通して私たちが現実に生きる風景や社会の姿にもう一度新鮮な驚きと発見を与えてくれている。

ブースではヨコハマトリエンナーレ2011でも紹介された望遠鏡で離れた場所の作品を覗くという手法での展示も合わせて行われ、来場者を楽しませていた。

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「Atomic Guitar No.7 Warlock-type + No.8 Warlock-type Left Handed」展示風景, 山川冬樹, 2011

同エリアにて同じくインスタレーション参加したのが、SNOW contemporary(スノウ・コンテンポラリー)より出品された山川冬樹の「原子ギター」シリーズだ。

骨伝導マイクを使った頭蓋骨とハミングによるパーカッシブなパフォーマンスでしられる山川は、自身のパフォーマンスを適切に伝える為に欠かせないアンプシステムが、震災以後日本が直面している限られたエネルギーを使用しなければ成り立たない事に愕然としたという。

70年代にアメリカで製造されたガイガーカウンターと、皇居前から採取された土を用いて創作されたこの作品、ギターのネック部分には同じみのエネルギー会社のものと思われるロゴが施され、その隣には手書きで「Atomic Guitar No.8」と記されていた。およそ0.20マイクロシーベルトを放っているというその土に取り込まれた放射線エネルギーによって、ギターは静かな倍音共鳴を奏でていた。ラディカルなその作風とは裏腹に、山川の施したチューニングが創りだすそのハーモニクスはとても穏やかで、メロディーすら存在しないその音色は不思議にどこか心休まるものだった。

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