アートフェア東京 2012
今回台湾より初参加したTKG+。1992年に開廊したティナケン・ギャラリーの現代美術部門であるこのギャラリーからは昨年ヨコハマトリエンナーレにも参加した台湾人作家のツァイ・チャウエイと、2005年森美術館で開催された「秘すれば花:東アジアの現代美術」展にも出品したウー・ジーツォンの作品が展示された。
「Landscape in the Mist」Wu Chi-Tsung Courtesy of the artist and TKG+
1981年生まれのジーツォンは絵画と彫刻の勉強をした後、大学院で建築の勉強を進める中で2002年頃から写真や映像を実験的に使用した作品を創り始める。英国やスコットランドでのアーティストレジデンシーも体験した彼のこの「霧の中の風景」は、西洋絵画と中国水墨画の双方を注意深く観察する中から生まれたという。
ヨーロッパの深い霧に包まれた森のようでありながら、アジア的な何かをも同時に想起させるこの不思議な映像には、ジーツォン自らが育てるところから始めたという盆栽が使用されている。心の奥深くに潜んでいた懐かしい記憶や思い出のようでいて、同時にどこかまだ見ぬ未来をも感じさせるこのシリーズ。彼はこの作品を通して、東と西・水墨画と油絵の手法やエッセンスとをこれまでになく近づけ、文化の壁による先入観や境界を敢えて曖昧にする試みによって新たな風景画世界を創り上げようとしている。
アートフェア東京 2012 展示風景
「アジアにおける東京」をひとつの基幹コンセプトに掲げた今回のアートフェア東京。昨年度よりドイツ銀行グループをオフィシャルメインスポンサーに迎えたことも2年続いたこの継続的アプローチの実現に大きな貢献サポートをしている。アジアの中での日本アート市場が今後どのように変化・進化してゆくのか、益々活発化しつつあるアジアにおけるその他アートフェアの動向と共に見守っていきたい。
アートフェア東京 2012
会期:2012年3月30日(金)~4月1日(日)
会場:東京国際フォーラム 地下2階 展示ホール
住所:東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
主催:アートフェア東京実行委員会
https://artfairtokyo.com
Text: Noriko Yamakoshi
Photos: Noriko Yamakoshi