アートフェア東京 2012

HAPPENINGText: Noriko Yamakoshi

「ディスカバーアジア」エリアに出展したギャラリー・スケイプは、2004年に韓国ソウルに開廊。フェアでは5アーティストの作品を展示していたが、その中でもイ・ヒュンクによる樹脂作品に目を魅かれた。

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「Felis Animatus & Leiothrix Lutea Animatus」Hyungkoo Lee, 2009

2007年ヴェネチアビエンナーレ韓国パビリオンにて自然博物館さながらの空間演出で「The Homo Species」展と題して出品されたこのシリーズはラテン語で「Animatus」(動画の、生き生きとした)と名付けられている。イは韓国で生まれ育ち、イェール大学でMFAを取得。その留学時代、男は強くなければならない(male superiority)という価値観で育ったアジア人の彼は大柄な西洋男性に対する体格のコンプレックスを痛切に感じ、「右手を大きくする手袋」(Enlarging My Right Hand with Gauntlet)や目を大きく見せる「顔改造装置」(Altering Facial Features with Device)などの作品を創りだした。

今回出品された「Animatus」シリーズは有名なハリウッドアニメーション「トムとジェリー」等をベースに製作されていると言われており、これは過去約50年以上に及ぶ韓国へのアメリカ文化の影響が示唆がなされていると見る側面もあるが、同時に実存しない不死身のアニメキャラクターの骸骨を解剖学的見地から作り上げることによって、仮想世界と現実世界、過去と未来との間(はざま)も諷示しようともしているようだ。初期作品創作の原動力になったという「コンプレックス」の真偽はともかくとして、何よりもイの一連の作品を魅力的にしているのは、一貫してベースにある彼のユーモアと遊び心にあるのかもしれない。

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「Hometown Boy」Liu Xiaodong

2006年ニューヨーク・サザビーズで開催されたオークションにおいて、当時の中国絵画史上最高値で作品が落札されて以来、世界中から注目を集めている中国の現代絵画アーティスト、ジャン・シャオガン(張暁剛)。特別協力美術館として北京より参加したユーレンス現代美術センターからは、古い肖像画をもとに家族の血のつながりと揺れ動く中国近代社会を表現することで知られるシャオガンの「血縁シリーズ」を始め、センターにオープンしたショップからも様々な作品やプロダクトが展示販売された。

なかでもブース中央奥に展示されていたのは、2011年に故郷の金城(中国北部・凌海市の一部)で発表されたリウ・シャオドン(劉小東) による「Hometown Boy」展からの作品。現代の中国油絵界を代表するアーティストの一人であるシャオドンは中央美術学院を卒業し、ヴェニスや上海ヴィエンナーレへも参加、2000年には北京-サンフランシスコにおいて「1990-2000」回顧展も開催されている。

日々の暮らしの情景や人物を長年描いてきたシャオドンだが、貧富の差が激しい中国にあって、自らのホームタウンに戻り自身の友人や知人を描き展示会を開催することには相当の覚悟が要ったという。ショーケースに展示されていたアーティストブック(上記写真)には、その小さな村の変わらぬ過去と現在、その日常が淡々と、どこかユーモアを持って切り取られていた。手法こそ異なるものの、シャオガン同様、彼の作品にも根底には家族や中国の変わりゆく近代社会を表現しようという思いが込められている。フェア会場では「スペシャルビデオプログラム」として、2011年の展示会にて発表されたドキュメンタリー映像も放映されていた。

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