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アートフェア東京 2012

HAPPENINGText: Noriko Yamakoshi

25ギャラリー余りが出展した「PROJECTS」エリアにおいて、ピンク色に染まっていたブースがある。昨年大阪に回廊したDMOアーツがレプリゼントする新星コハラチアキは、2007年ユニクロ・クリエイティブ・アワードにおいて草間彌生賞を受賞、2011年にはCanvas@Sony「アートウォール」グランプリを受け、同年ソニービル壁面の巨大キャンパスには彼女の作品が飾られた。

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© 2012 Chiaki Kohara/DMOARTS.COM

ビビッドな色使いの中に独特の軽さと重さを内包するタッチで、大きな耳と時に不気味にも見える手足の伸びた女の子を描いてゆくコハラ。美大には行かず、デザイン専門学校ではどこか異端生であったという。そのシグネチャー的長い手足は自身が好きだという昆虫にインスパイヤーされていると同時に、素直になれない女の子の複雑な心情や、誰かや何かとつながっていたいという不安も表しているのかもしれないと彼女は語る。ブース内では得意のライブペインティングも披露した。

「絵はコミュニケーションの一つの道具」と語るコハラはにとって、観客との会話を作画に取り込んでゆくライブペインティング作業は、自身と見る側との境界線を取り払う自由を与えてくれる場としての大切なワーキンググラウンドのようだ。

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「B5」中野浩二. 「無題 12-03」中野浩二, ミクストメディア 石膏、麻、他 Courtesy of the artist and Roid Works Gallery

「人間の形を一から把握し直したい」と彫刻家・中野浩二は言う。今回初出展となるロイドワークスギャラリーより新作を出品した中野は東京造形大学彫刻科を卒業後、中之条ビエンナーレなどでのグループ展を経て、2010年「現れた骨格」(ギャラリーKINGYO)、2011年「NAKANO KOJI SCULPTURE」(ギャラリーFuTaBa/ロイドワークスギャラリー)と力強い個展を開催してきている。

近年、ドローイングと石膏を用いた首像に注力している中野。それらの作品は、目にした瞬間、見る者の奥底にある言葉にできない感情をわしづかみにし、あたかも自身がそれに同化してゆくような感覚を起こさせる。作風は時にアグレッシブに見えながらも、人が持つもろい心の底を静かに肯定し、そしてそっと傍に寄り添ってくれる。

「人間の存在の不思議さ、奥深さ」。石膏という素材の短時間で硬化してしまう特性は、逆に人の具体的な形態を追うことや写実的細部へのこだわりを転換し、自分にとってのリアルな人間の存在を形にすることを可能にしてくれるのかもしれない、と中野は言う。『いつも不完全ながらも、試行錯誤して制作を続ける。少しずつ焦点は絞られていきながら、気持ちはうっすらと広がりを持って自由になれていく気がする。』

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