丁乙(ディン・イ)

PEOPLEText: Hiromi Nomoto

中国現代アートで、異質なアーティストであるディン・イ(丁乙)。彼は長年に渡る創作活動において、一貫して抽象表現を行ってきた。一筆一筆、積み重ねていくことで、深く力強い作品をつくり上げている。それは彼の時間であり、その累積のようだ。その線の集まりは揺らぎをつくる。その揺らぎが時折、きらりと光を放っている。
前日香港から帰って来たばかりで、数日後北京に行くと言うディン・イが時間を見つけインタビューに応じてくれた。

ディン・イ(丁乙)

あなたの創作の背景からお聞きします。あなたが創作を始めた頃、どのようなアートやアーティストに影響を受けたのでしょう?

とても複雑です。中国は80年代に大きな変化を経験しました。それ以前にはアートの情報は全くなく、一番良いものとはソビエト連邦の作品でした。1980年代私は美術系の学校でアートを学び始め、その頃から画集などで欧米の現代アートを見ることができました。

あなたの作品の背景学生時代見ていたアートとはどのようなものだったのですか?

当時私は風景や人物を描いていました。そしてエコール・ド・パリのアーティストであるユトリロの印象を強く受けていました。彼の描くパリの街の感じが上海に似ていたことに私は心を打たれました。私は彼の手法や考え方を用いて、受け継がれてきたものを含めた西洋芸術への認識を深めていきました。

中国に大きな変化が起こり、(外国の)沢山のモノが紹介されました。私は1983年頃から抽象表現を試し始め、1988年になってから自分のスタイルを確立しました。その頃私が影響を受けたのはモンドリアン、フランシスコ・ベーコンやステラなど、彼らに引きつけられました。

「十示1997-8」200×270cm  丙烯、成品布 1997   Appearance of crosses 1997-8 Acrylic on tartan 200x270cm
「十字 1997-8」1997 アクリル、既成の布地

あなたの作品を知る過程で、“モンドリアン”というアーティスト名があがります。あなたはなぜモンドリアンに注目したのですか?

私個人の性格にあります。私は比較的静かな性格です。だから私は感情を使って表現することがあまり好きではありません。基本的に頭で思考してアートを表現します。

あなたの抽象表現にはどのような動機があったのですか?

私は西洋と中国伝統の絵画、これらを排除し、(アート表現における)私個人の言語を探そうとしました。中国伝統絵画では完璧な抽象に到達することが極めて難しく、かつて伝統絵画の作者たちに山水画の概念の中での抽象はありましたが、純粋な抽象ではありません。これらを見て、私は新しい方法を探さねばと思いました。アートらしくないアート、つまり私たちが思い描いているような伝統的なアートでないもの。私はアートとデザイン、2つのもの結合させました。しかし私が初めてつくった作品は、多くの人に受け入れられなかった。

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